「2人殺害ひき逃げ」男の“死刑回避”は正しかったのか? 本人が明かす「当てて逃げようと思っただけ」「思ってた以上に結果が悪くなっちゃって」
「小説を読んで過ごしています」
最初の面会から半年後の今年1月、記者は再び仙台拘置所を訪ね、複数回面会を行ったが、盛藤の考えに変化が生じた様子はなかった。
――現在、最高裁判決を待つ立場だが、無期懲役の二審判決をどう思っている?
「殺すつもりはなかったというこちらの言い分が一部認められたので、そこはよかったと思いました。一審ではこちらの言い分が認めてもらえなかったので」
――毎日どう過ごしているのか。
「ここで借りられる小説を読んで過ごしています。上限があるので、決まった冊数しか借りられない。大沢在昌の新宿鮫シリーズが好きです」
――時間は十二分にある。何を考えて過ごしているのか。
「裁判のことです」
――裁判のことというのは、最高裁で死刑にならず無期懲役判決が出て欲しいということ?
「そうです。最高裁判決がいつ出るか、弁護人もわからないので、不安で。知らせが来るまで待っているしかない状態です」
―一審判決は死刑だったが。
「死刑は恐ろしいです」
――無期懲役に対しては。
「検察側に殺すつもりがあったかのように言われたのは納得できないですが、結果的には二人亡くなっているので、それ(無期懲役)以上を求めるのは申し訳ないかなと思います」
――自分のやったことを後悔しているか。
「自分が悪いんですけど、思ってた以上に結果が悪くなっちゃって。今は(事件を起こす前に)戻りたい。戻りたいけど、戻れないという気持ちで。(事件を)起こさなければよかった」
――今は拘置所生活だが、刑務所との違いは。
「一長一短ですよね。刑務所だと面会が家族などに制限されますが、テレビが見られますよね。拘置所では見られませんから」
この面会から4か月後の今年5月末、最高裁は盛藤の望み通り、死刑を求刑していた検察側の上告を棄却した。死刑回避は、5人の裁判官全員一致の結論だった。
被害者遺族である橋本さんの妻は、一審の供述調書で次のように述べている。
〈無期懲役だと被告人の願いがかなう。こんな不条理あるか。極刑を望む〉
09年に裁判員裁判が始まり、今年で15年を迎える。その間、一審の裁判員裁判で下された死刑判決が破棄され、最高裁で無期懲役が確定するのは、直近の盛藤の事件を含め8件にも及ぶ。
遺族の願い虚しく、死刑を免れた盛藤はテレビを楽しみながら余生を過ごすことになる。