二度と現れない “珍記録ホルダー” 「1球勝利」「1球敗戦」「1球セーブ」「1球ホールド」をすべて記録した中日投手がいた!

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落合には珍記録「0球降板」も

 実は、落合は前年にも「0球降板」という珍事の主人公になっている。03年6月26日のヤクルト戦、4対1とリードした中日は、先発・野口が降りしきる雨の中で制球を乱し、7回に安打、四球、犠飛で1点を返されてしまう。

 なおも2死二塁のピンチで、投手の花田真人に右の代打・佐藤真一が送られると、山田久志監督はリリーフエース・落合を投入した。

 ところが、投球練習中に雨が激しくなり、試合中断。そのままコールドゲームになったが、落合は1球も投げていないのに、すでに交代が告げられていたことから、登板が記録された。

「登板数にカウントされるとは知りませんでした。ツイてるのかなあ。でも、これって、セーブとか付くんじゃないですか?」と落合は目を白黒させ、捕手の谷繁元信からも「ゼロ球セーブですか?」と冷やかされた。

 だが、けん制球などでアウトを取ったケース以外では、「ゼロ球セーブ」は認められない。これまた珍しい「ゼロ球降板」となった落合は「霊感が雨を呼んだと書いてください」とコメントしたが、これだけ珍記録にご縁があるのは、やはり霊感のなせる業としか言いようがない。

きわめつけの「1球ホールド」

 そして、ホールド制が導入された05年には、1球ホールドも加わった。

 同年7月27日の横浜戦、2対2の9回2死無走者、高橋聡文に代わって5番手としてマウンドに上がった落合は、小池正晃を1球で遊ゴロに打ち取ったあと、延長10回の攻撃中に代打を送られて交代。中日はベンチ入りしていた投手9人のうち、8人までを登板させる総力戦の末、延長12回、2対2で引き分けた。

 この結果、2番手・チェンから落合を含む6人にホールドが記録され、落合は1球ホールドとなった。

 現役選手では、広島・塹江敦哉が1球勝利と1球ホールドを記録しているが、落合の“金字塔”にはまだまだ及ばない。今後、1球限定の珍記録をすべて達成する投手は、おそらく現れないだろう。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

デイリー新潮編集部

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