「人間国宝」ダメなら会長に 落語協会の“粋な人事”

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人間国宝がダメなら…

 ちょうど1年前のいまごろ、さん喬と同世代の五街道雲助(76)が人間国宝に認定された。落語家としては五代目小さん、桂米朝(故人)、小三治に続く4人目の栄誉となったが、

「業界の下馬評では、さん喬の方が上でした。それだけに結果を知らされた時、本人は肩を落としていたとか。雲助を除く三人のうち、二人はさん喬と同じ柳家一門だったので、周囲は“文科省が別の一門を優先したのでは”とうわさし合った。“気の毒だなあ”と同情を寄せていたんですよ」

 が、捨てる神あれば拾う神あり。落語協会の古参会員がそっと明かす。

「そんな背景もあって、誰が言うともなくさん喬に“落語協会会長”の肩書が用意された。歴代会長には、八代目桂文楽、古今亭志ん生(ともに故人)、圓生、小さん、小三治と、昭和や平成を代表する名人の名が並んでいますから」

 もっとも、これで割を食ったお方も。市馬のもとで10年間、副会長を務めてきた林家正蔵(61)である。

「落語協会には“会長の後任は副会長”との暗黙の了解があります。8代会長の圓歌、9代の馬風、11代の市馬らは副会長から昇格して就任した。今回もそれに倣うのが筋でしたが、先の事情を知る正蔵は何も言わずに譲った格好です」

 こちとら江戸っ子。なんとも粋な話じゃねえか。

週刊新潮 2024年7月11日号掲載

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