「人間国宝」ダメなら会長に 落語協会の“粋な人事”
創立100年を迎え、落語協会の顔が代替わりした。6月26日の総会で次期会長に選出されたのは、芸歴57年の柳家さん喬(75)。人情噺(ばなし)も滑稽噺も「名人の域」という大ベテランである。
【写真をみる】さん喬の会長就任で“割を食った”のに…「粋な対応」をした人物は?
「平成26年から5期10年にわたって会長を務めた柳亭市馬(62)は弟弟子。二人とも平成7年に人間国宝に選ばれた五代目柳家小さん(故人)の門下ですが、さん喬の入門は市馬より13年も早い。会長就任は前後しましたね」
とは落語担当記者。
一大勢力の柳家一門
「さん喬が属する柳家一門は、落語協会における一大勢力です。協会員は真打、二つ目、前座、色物などを含めて350人以上で、柳家一門は総勢100人を超える“最大派閥”。そのうち真打は、およそ70人という大所帯です」
ウラ金を好むどこぞの派閥とは異なり、ここには柳家権太楼(77)、柳家喬太郎(60)、柳家三三(さんざ・50)といった人気も実力もピカイチの人材がそろっている。
「かつて、五代目小さんは昭和47年から平成8年まで、24年間も会長を務めました。三遊亭圓生(故人)一門による分裂騒動の後は、平成8年に会長に就任した三代目三遊亭圓歌(故人)が担った10年間以外は、小さんの弟子である鈴々舎馬風(84)、柳家小三治(故人)、柳亭市馬、そしてこのほど会長に選ばれた、さん喬という具合に、柳家一門の会長が4代にわたって続くことになります」
会長就任は“功労賞”
晴れて12代会長となったさん喬は、平成25年に芸術選奨文部科学大臣賞を、平成29年に紫綬褒章を手にした。後進の育成にも定評があり、中でも喬太郎は全国的な知名度を誇る一番弟子だ。
「75歳での会長就任は歴代最高齢。ちなみに落語芸術協会会長の春風亭昇太は今年で65歳です。さん喬は就任会見で“皆様のご期待に沿えるように老体にむち打って、務めさせていただく所存でございます”と、年齢を意識したあいさつをしていました」
会長職の任期は1期2年とされる。これまで歴代会長のほとんどは少なくとも2期以上を務め上げてきた。
「その点、さん喬に長くやる気はないようです。名誉なことではありますが、協会がある上野界隈には、今回の就任話が彼への“功労賞的な意味合いが強いのでは”なんて声が聞こえてくるからかもしれません」
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