「プロ野球選手は二度とやりたくない…」楽天・阪神から戦力外通告、立正大法学部准教授へ転身した西谷尚徳さん(42)の告白

  • ブックマーク

「生まれ変わっても、プロ野球選手にはならない」

 西谷が現役を引退したのが10年オフのこと。高校、大学で教員となったのは11年春のこと。まったくブランクなく、次の道が決定している。現役時代からきちんと将来を見据え、綿密な計画の下で準備をしてきた成果だった。

「現役時代は、とことん野球のことだけを考えて、野球だけに埋没する。そういう考え方があるのも理解できます。でも、プロ野球というのは限られた選手だけが活躍できる厳しい競争の世界です。入れ替わりも激しい世界だからこそ、野球以外の好きなこと、夢中になれることは絶対に持っていた方がいい。僕は今でもそう思っています」

 彼が語る「野球以外の好きなこと、夢中になれること」を突き詰めれば、第二の人生の指針となる可能性が高い。西谷はそう考えている。その後、16年には自著『社会で活躍するためのロジカル・ライティング 』を出版し、18年には准教授となった。順調なキャリア形成を送っている西谷に、「現在の仕事の大変なところは?」と尋ねると、真っ先にこんな言葉を口にした。

「プロ野球選手より大変なことは、今のところまだないですね」

 この言葉を受けて、「プロ野球選手時代は、それほど大変でしたか?」と尋ねると、西谷の口元から白い歯がこぼれた。

「大変でした(笑)。もう二度とやりたくないというか、生まれ変わってもやらないですね。こんなことを言ったら、ファンの方に怒られてしまうかもしれないけど、プロ時代は大変なことしかなかったです。でも、今は大変と言えば大変ですが、学生たちのキラキラした目や、卒業生が社会に出て活躍している姿を見れば、やりがいを感じるし、とても嬉しいし、楽しいことばかりですからね」

 球界再編騒動に巻き込まれる形で、新生球団に入団した。プロ入り後は相次ぐ故障に悩まされ、思うような成績を残すことはできなかった。後悔もあれば、反省もある。「自分はもっとできたのではないか?」とか、「故障さえなければ」と考えることもある。改めて、「あなたにとってのプロ野球選手時代とは?」と尋ねると、その言葉は短い。

「苦しい時期でした」

 続く言葉を待った。

「今でも、悪い夢を見るときは、必ず野球なんです(苦笑)。自分に自信が持てないまま打席に入って悪い結果を招いてしまう。“もっと、こうすべきだった”とか、“こんなやり方をしていればよかったのに”とか、そういう夢ばかりなんです」

次ページ:野球で学んだことは、社会で通用することばかり

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。