坂本冬美が歌う、“昨年亡くなった弟の十八番” 「辛くて歌えないと思っていたら…」背中を押された不思議な出来事を語る
天国に旅立った弟へ……「Oh!クラウディア」に込めた“想い”とは
そして、もう1曲、坂本の特別な想いが込められているのが、サザンオールスターズ「Oh!クラウディア」のカバーだ。
「アルバム『Nude Man』に入っている曲ですが、私自身も大好きで、学生時代から聴いていたんです。それと同時に、私の弟も桑田さんが大好きで。『ブッダ~』を書いていただいた際に、ふだんは電話なんてかけてこない弟から“桑田さんが作ってくれるなんて、すごいなー!”って連絡があって、その時も、“カラオケでは桑田さんの曲しか歌わないんだ”って言っていたんです。
その弟が昨年に亡くなり、お別れの時にどうしてもサザンの『Nude Man』を流してほしいと、彼の子どもたちからも聞いて。カラオケの十八番も『いとしのエリー』と『Oh!クラウディア』だよと、そこで初めて知りました。
今回、もともと『Oh!クラウディア』も候補曲にあがっていたのですが、今はちょっとつらくて歌えないと思っていたら、まるで映画『ゴースト ニューヨークの幻』のワンシーンかのように、そばにあったバランスボールがふっと動いたんです。これは弟からの、“歌ってくれよ”という想いではないかと確信して、歌うことにしました。でも、それこそ感情を入れたら泣いてしまいそうだったので、どこか客観的に歌っています」
このように全10曲、本人は一歩引いて歌ったと語っているが、どれも熱い想いは十分に伝わってくる。また、本人が”つい入ってしまう”と語るコブシのような力の込め方や間の取り方など、随所に演歌的な要素が入ってくる点も、メッセージが色濃く伝わるのだろう。
最後に、坂本にサブスクのリスナーへのメッセージをお願いすると、
「いろいろなタイプの歌を歌っているので、まずは気軽に聴いてください。それがきっかけで、コンサートや劇場公演にも、ぜひぜひ足を運んでいただけたらと! お待ちしています」
と、朗らかに答えてくれた。
坂本は、「カバー曲がこんなに上位に多いとは……」と、終始驚いていたが、彼女の場合は選曲もアレンジも、何より歌い方も、“どのように解釈すれば、自分が歌う意味があるのか”を1曲ずつ考えて抜いており、その高い熱量こそが、すでに彼女のオリジナルであるのだとよく分かった。そうした彼女の想いの込め方は、私たちの人生においても、“どうすればひと味違うものになるだろう”、と考える指標となるはずだ。
***
全4回でお送りした坂本冬美さんインタビュー。第1回では「また君に恋してる」人気への思いと「夜桜お七」誕生秘話について、第2回では果敢に挑んだオリジナル曲、そして第3回では他アーティストとのコラボ曲やカバー曲についてそれぞれ語ってくれた。
《INFORMATION》
シングル「ほろ酔い満月」(カップリング:「淋しがり」)、カバーアルバム『想いびと』発売中!
◎『想いびと』収録曲
M1.「ひまわりの約束」 作詞・作曲:秦 基博 編曲:城戸紘志
M2.「恋の予感」 作詞:井上陽水 作曲:玉置浩二 編曲:佐々木博史
M3. 「サクラ、散ル…」 作詞・作曲:GACKT/YOHIO 編曲:城戸紘志
M4. 「月」 作詞・作曲:桑田佳祐 編曲:宮野幸子
M5. 「千の風になって」 日本語詞・作曲:新井 満 編曲:新倉一梓
M6. 「身も心も」 作詞:阿木燿子 作曲:宇崎竜童 編曲:野村陽一郎
M7. 「One more time, One more chance」 作詞・作曲:山崎将義 編曲:萩田光雄
M8. 「Oh! クラウディア」 作詞・作曲:桑田佳祐 編曲:萩田光雄
M9. 「心 はなれて」 作詞・作曲:小田和正 編曲:佐々木博史
M10.「花瓶の花」 作詞・作曲:石崎ひゅーい 編曲:宮野幸子
(取材・文:人と音楽をつなげたい音楽マーケッター・臼井孝)