「石丸伸二氏」批判殺到でも「案外支持したい」と思わせる理由 かつての「小池百合子都知事」との相似点

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ドン・キホーテ

 この、利権政治からの脱却という点が、小池氏の2016年の選挙戦での姿勢に似ているのである。小池氏は当時自民党所属の衆議院議員だったが、安倍政権になってからは不遇をかこっていた(これは市長だった石丸氏とは異なる)。「初の女性首相は小池さんだ!」といった期待をずっとされていたものの、ライバル・野田聖子氏や稲田朋美氏の方が安倍氏に近いとみられていた。

 2015年の総裁選で小池氏は出馬すらままならず、さらに安倍氏の支持は国民的にも党内的にも高い状況にあった。このままだと総理にはなれない、と考えたのか、総理の次に日本で目立つ政治家である都知事選に打って出た。旧態依然とした自民党政治から脱却化し、女性が活躍できる社会を作ることも意図しながら、「(男性が中心である政治の世界の)ガラスの天井を突き破る」と宣言。

 石丸氏の「都市開発」と「産業創出」と同様のニュアンスのことは小池氏も公約で述べていた。「満員電車ゼロ」を含む「7つのゼロ」はそれにあたるだろう。かくして小池氏は「自民党の男性中心の老害政治から迫害されたジャンヌ・ダルクが無所属で孤立無援の都知事選に出馬する」という図式を作ったのである。

 石丸氏も常に旧態依然とした安芸高田市議会を批判し、実際、若者ウケするポピュリズム的な要素はあるが、高齢議員が苦手なYouTubeとSNSを駆使して、議会内では反対派が多いながらも議会外からは圧倒的な支持を獲得した。いわば同氏は「巨大な風車に立ち向かうドン・キホーテ」のように見せることに成功した。

“変えよう”が、“カイヨー”に

 15年の都知事選における小池氏の対抗馬はリベラル派が推した鳥越俊太郎氏と、自公が推した前岩手県知事で元総務相の増田寛也氏。人権派弁護士として知られ「日本のバーニー・サンダース」とも呼ばれた弁護士の宇都宮健児氏も立候補を表明していたが、左派が「野党一本化が大事だ! 鳥越さんに任せろ」と猛烈に反対し、宇都宮事務所にFAX攻撃を仕掛けるなどして宇都宮氏はその志を鳥越氏に託した。

 こうしてこの3人が中心の選挙となったが、選挙序盤から鳥越氏は失速する。76歳という高齢もあったのだろうが、街頭演説の際、「一緒に東京を作りましょう」とシュプレヒコールをあげるよう聴衆に呼びかけるも、確認のための次の発声では「一緒に新しい東京を作りましょう」に変わっていて、聴衆は困惑。

 実際にシュプレヒコールが始まると「一緒に東京」から始まり「新しい」が抜けていた。これには再び聴衆困惑。さらに、最後「作りましょう」が「変えよう」になっていたのだが、活舌の悪さから「カイヨー!」と聞こえてしまった。これはさんざん5ちゃんねる等で保守派からおもちゃにされ「カイヨー鳥越」などと呼ばれる始末。

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