瑠奈被告は中学時代から通院…精神科医の父親・修被告を有名精神科医はどう見ているか【ススキノ首切り裁判】

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限られていた“打つ手”

 その後、遺体の一部が入った小瓶を見せられ、修被告は殺人事件が起きたことを確信。だが、通報はしなかったことを弁護士に質問されると、《すぐにでも娘は逮捕されると思っていた。私の手で突き出してしまえば、娘を裏切る、突き放すことになる。娘が抱えていた重荷を考えると、裏切る行為になると思ってできなかったすぐにでも逮捕されると思った。私の手で警察に突き出すのは娘を裏切ることになる》」と答えたのだ。

「これも修被告の“普通の父親”としての素顔が出た証言だと思います。我が子が人を殺めたとは分かっていても、心のどこかで否定したい気持ちがある。我が子が殺人者だと認めたくないのが本音でかばおうとする。修被告と同じ状況になればどんな人でも、彼と同じように警察への連絡をためらうのではないでしょうか」(同・岩波氏)

 警察に通報する以前の問題として、「娘の暴言や暴力がひどくなった時、何か手を打つべきだったのではないか」という意見は根強い。修被告は精神科医でもある。プロの知見を我が子に活かすことはできなかったのだろうか。

「それでは実際に瑠奈被告を入院させようと決断します。抑え込んで病院に連れて行こうとしましょう。瑠奈被告は女性ですが、成人した女性が本気で抵抗すると、やはり大変な力を発揮します。大の男が4~5人は必要でしょう。しかも瑠奈被告の場合、解離性同一性障害(註:かつては多重人格と呼ばれていた症例)の可能性がありますが、この診断では強制入院を受け入れない病院が多いと思います。統合失調症の症状が顕著で、被害妄想から他者への攻撃性を公言しているような状況でなければ難しいでしょう。そういう意味では、修被告と浩子被告の“打つ手”も限られていました」(同・岩波氏)

20人クラスの意味

 この殺人事件から即効性のある“教訓”、“対策”を導き出すのは難しそうだ。迂遠な道かもしれないが、「教育現場の改善」が最も効果を発揮しそうだという。

「引きこもりになってしまった人は、学生の時に不登校を体験していることが多いことが分かっています。となれば、生徒が不登校になりにくい教育環境を整えれば、引きこもりの減少も期待できます。様々な専門家が今も研究を重ねていますが、20人クラスの実現を求める声が増えています。小規模のクラスは生徒の一人一人に先生の目が届くため、不登校の子供が減ることが明らかになっているのです。小規模のクラスであれば、悪質ないじめも減少すると考えられています」(同・岩波氏)

デイリー新潮編集部

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