瑠奈被告は中学時代から通院…精神科医の父親・修被告を有名精神科医はどう見ているか【ススキノ首切り裁判】
「私の首を絞めることが責任だ」
北海道新聞は6月27日の朝刊に「瑠奈被告 精神科受診拒む*ススキノ殺人*事件5カ月前」との記事を掲載した。
記事によると、瑠奈被告は不登校だった中学生のころに精神科医を受診。20代半ばまで通院していたが、担当医が病気になったことなどから約6年前に治療が途絶えたという。
通院を再開させたい修被告は、治療に役立てようと瑠奈被告との会話を断続的に録音していた。それによると、昨年1月下旬に修被告が「なるべく早く診察してくれる病院を予約しよう」と提案したが、瑠奈被告は「囚人みたいに独房に突っ込めば、お払い箱になって楽になると思っているでしょ」と抵抗を示した。
他にも精神状態が悪化した瑠奈被告が「私の首を絞めることが責任だ」などと強要し、修被告が「私は誰も殺しません。私にはできません」と拒否するやり取りが確認されているという。
北海道新聞は録音を弁護側が注目していると報じ、その内容から《娘が自傷行為を繰り返す中、行為が激しくなるのを避けるため、両親が暴言や暴力に耐えざるを得ない状況が長期に及んでいた》と法廷で主張する可能性を伝えた。
「医師として診察にあたっていると、引きこもりの子供が暴力や暴言で親を支配しようとするケースは、よくみかけます。子供の支配に服従する親は珍しくありません。私の診た患者さんでは、親に自分で指定した精神科へ連れて行くよう強要。診察が始まると、これまでの病院や医師の悪口を並べ立てる。診察が成り立ちませんので、“ドクターショッピング”を繰り返し、その結果として患者さんは全国の病院を回っていました。そして診察の際、病院や医師の文句を言うのは患者さんである子供だけでなく、親も一緒になって文句を言っていました」(同・岩波氏)
「首。拾った」
いわば“子供に取り込まれてしまう”親は珍しくないというのだ。その一方、子供の家庭内暴力に耐えられず、子供を見捨てる親も多いという。
「文字通り、親が子供を捨て、別の場所に逃げだしてしまうのです。何とかして、わが子と向かいあおうとする両親でも、わが子が引きこもりであるという事実から無力感に苛まされ、暴言や暴力を恐れて文字通り“腫れ物に触るよう”にして子供と接します。修被告の証言からも、そうした親の傾向が浮き彫りになっています。殺人事件という特別な事案が発生しなければ、瑠奈被告と修被告、浩子被告の日常生活は続いていたと思います。それこそ高齢の親が年を取った子供の世話をするという『8050』問題に直面しても全く不思議ではなかったのではないでしょうか」(同・岩波氏)
第2回公判では、修被告が「私の手で警察に突き出すのは娘を裏切ることになる」と弁護士に答えたことも議論を呼んだ。
昨年の7月2日、瑠奈被告は被害者を殺害した後、迎えに来た修被告と帰宅した。その際、瑠奈被告はキャリーケースから小ぶりの黒い袋を取り出し、修被告と浩子被告に「首。拾った」と言った。2人は「まさかね」と信じなかったという。
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