瑠奈被告は中学時代から通院…精神科医の父親・修被告を有名精神科医はどう見ているか【ススキノ首切り裁判】

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むしろ典型的な一家

 修被告は弁護側から当時の気持ちを訊かれ、《手放しで喜ばしくはないが、許容していた》と回答している。

《(瑠奈は)社会的に何も関心がなく、閉じ籠っていて、「こんなつまらない人生、早く終わらせたい」と言っていた。本人が社会と繋がりたいと思ったのであれば、こちらもしたいことを許容したいと思った》

 こうした家族関係を、テレビ局でさえ“いびつ”という表現を使って報じている。一般的な世論となると、被告一家に対して抱いた違和感は相当に強いようだ。

 Xを閲覧してみると、《家族3人が完全に崩壊してる》、《家族の行動が理解不能過ぎて色々追いつかない》、《一般的に考えても異常のオンパレード》──といった投稿が圧倒的に多い。

 精神科医で、昭和大学附属烏山病院の特任教授を務める岩波明氏は「被告一家を特異な存在と見なす傾向は報道にも世論にもありますが、こうした視点に違和感を持つ専門家や関係者は少なくないのではないでしょうか」と指摘する。

「猟奇的な殺人事件で、社会的なインパクトが非常に強かったという特殊な背景があります。裁判でも真相解明のため被告一家の家族関係に焦点が当てられ、特異な3人だという印象が強まってしまいました。しかし、そうした特別な要素を全て取り除き、純粋に家族関係の骨格だけを浮かび上がらせると、むしろ『引きこもりの子供がいる家族』の典型例ではないかと思います」

引きこもりの子供がいる家庭

 内閣府は2022年11月、引きこもりに関するアンケート調査を実施。翌23年の3月に「いわゆる“ひきこもり”の人は、15歳から64歳までの年齢層の2%余りにあたる推計146万人に上る」との結果を発表した。

 146万人の引きこもりが暮らす家庭の表面的な“かたち”はそれぞれだろうが、その骨格部分は被告一家と共通する点が多いという。

「修被告は裁判で『18歳より前はそれなりにしつけていた』と述べたようですが、これは引きこもりのいる家庭で多く見られるパターンです。我が子が小学生や中学生で不登校になると、父親や母親は何とかしようと努力を重ねます。カウンセリングを受けさせたり、精神科に通院させたりする。それが功を奏するケースもあれば、うまくいかないこともあります。改善が見られないまま子供が10代後半に成長すると、親の言うことを聞かないことが多くなります。『病院に行こう』と提案しても拒否されます。子供が親に罵詈雑言を浴びせたり、暴力を振るったりすることも珍しくありません。瑠奈被告の暴言や暴力の実態は裁判で明らかになりましたが、まさに典型例だと言えます」(同・岩波氏)

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