「ワサビを醤油に溶いてはダメ」「タケノコの刺身は美味」…“愛読者”でも納得できない『美味しんぼ』の主張10選
味の素を使うのは悪
味の素が漫画『ONE PIECE』とのコラボを開始した。味の素の瓶に描かれた「アジパンダ」が同作のキャラに扮したものとなっている。通常瓶の蓋は赤色だが、コラボバージョンでは赤、緑、紫、水色、オレンジ、黄色、灰色、小豆色、エンジ、ピンク、金色、紫っぽいピンクがあり、全18種類。7月1日に第一弾、8月1日に第二弾、9月1日に第三弾が登場するなど、コンプリートするには一体どれだけ味の素を買うか分からないレベルである。
【写真】筆者がタイで購入した「味の素」の“ならでは”なパッケージ
また、キャラクターが登場するCMも7月7日から開始。これは告知画像を見ると、ルフィが味の素をかけた「究極の卵かけご飯」を食べるものである。ここ何年か人気料理研究家のリュウジ氏が味の素を推すレシピを発表したり、自身も味の素が大好きであることを公言したりしている。味の素の公式HPにはリュウジ氏も登場しており、味の素を使ったおススメレシピを紹介している。
さて、筆者は50歳だが、まだ学生だった1980~1990年代を振り返ると、「味の素を使うのは悪」という風潮があった。それは「化学調味料」という呼び名に加え、「味がすべて同じになってしまう。このままでは食文化の破壊だ」といった指摘も少なくなかったからだ。アメリカでは中国料理店を訪れたが頭痛や顔のほてりを訴え、これが「チャイナレストランシンドローム」と呼ばれ、その元凶が味の素とされた。味の素は「麦からビール サトウキビから味の素」というCMで自然由来をアピールし、さらには「うまみ調味料」と明記して反論したが、批判する声は根強く残った感がある。
美味しんぼが権威に
そうした「味の素=悪玉」論を加速させたのが漫画『美味しんぼ』である。漬物を扱う回では、化学調味料を使った漬物を日本人が喜んで食べる一方、アメリカ人2人はそれをおいしくない、と言う。それを基に主人公・山岡士郎は日本人が化学調味料に味覚を破壊された、といった分析をするのである。同作では「舌がピリピリする」といった表現もするなど、とにかく化学調味料を敵視している印象だ。
ちなみに、筆者は味の素をおいしいと考えており、リュウジ氏が声をあげてくれて良かったと思っているほどだ。一方で、筆者は『美味しんぼ』全巻をこの40年間何度も読み、完全に山岡士郎・海原雄山(つまりは作者の雁屋哲氏)の“信者”となった。だが、自分で料理をするようになったり、頻繁に外食をするようになったりすると「山岡と雄山の言ってることには必ずしも同意できないな……」ということが増えてきた。そのひとつが、先に述べた味の素の扱いだったりする。本稿では、同様に『美味しんぼ』の教えの中で納得できないものを挙げてみる。
第一巻で、山岡は「食通」と呼ばれる料理の「権威」をコテンパンに批判したが、皮肉なことに『美味しんぼ』が「権威」と化し、味の素やドライビールを批判し、それらを好む者は味音痴であるかのように扱った。だからこそ、今、山岡と雄山に反論してみたい。
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