ウルトラマンが子育てする野球選手、手足の長い細身体形…米国発のアニメ、制作者が語る“異色ずくめ“の理由

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普遍的に得た経験を

 今回の作品の着想は二十数年前にさかのぼる。

「最初に着想を得た際は、ウルトラマンのストーリーじゃなかった。今回のウルトラマンの作品を作るにあたり、どうやったら共感してもらえるのか。それはやはり子育てではないか。皆子どもだったことがあり、親だったこともある人が多い。親子で何らかの葛藤を経験したことがある人もいる。そうした普遍的に得た経験を入れれば、より多くの人にこの物語に興味を持ってもらえる、ひいてはウルトラマンに興味を持ってもらえるのではないかと考えたんだ」(ティンドル監督)

 ウルトラマン=サトウ・ケンが子育てに悪戦苦闘する姿は「僕の実体験に基づいている。僕には娘がいるので難しくはなかったよ」。

 一方のアオシマ共同監督は「円谷とのミーティングの際、ウルトラマンがうんと小さい頃のエミを抱いているビジュアルイメージをアートディレクターに描いてもらい、それを円谷プロに見せたところ、「こういうウルトラマンは見たことがない」とすごく気に入ってもらえた」と明かす。

 親や子どもとしての普遍的な体験とは裏腹に、ケンは野球界のスーパースターという、誰もが経験できないような立場ではあるが、「ウルトラマンの務めを果たすために、たくさんのことを手放さないといけない立場にしたかった」とティンドル監督。

 ちなみに、ケンは読売ジャイアンツの選手として、阪神タイガースとのマッチレースを繰り広げるが、スタッフの一人が熱烈なタイガースファンだったという。1985年にタイガースが日本一になった当時、道頓堀川にカーネル・サンダース人形が投げ入れられ、その後は優勝から遠ざかったことから「カーネル・サンダースの呪い」という都市伝説もささやかれた。人形の大部分は後に引き揚げられたが、見つからなかった左手がケンの部屋に飾ってある、という小ネタもあるので、視聴者は必見だ。

さまざまなオマージュ

 作品を見ると、過去のウルトラマンシリーズをオマージュしたような名前や物が目に付く。

 ケンが乗る車は、「帰ってきたウルトラマン」に登場するマットビハイクルに見えるし、そのナンバープレートも「M-78」と書かれている。ティンドル監督は「あれは(ウルトラセブンに出てくる)ポインターでもよかったんだけど、ポインターはルックスが変わっているからね。ウルトラマンを知らない人には「なんだ、この車は」と思われる可能性もあるので」とマットビハイクルを選んだ理由を説明する。

 アオシマ共同監督は「他にも交通表示や街の看板などにもいろいろありますね」と笑う。これらは「アーティストたちにもウルトラマンのファンが多く、彼らから『こんなこともやりたい』と言ってきたので、こちらでOKを出して実現したんです」という。

 一方で、青い目のウルトラマンといえば、同じ米国で撮影された「ウルトラマンパワード」を思い出す人も多いかもしれない。ただこれについてティンドル監督は「パワードじゃないんですよ。(ボディの)赤とシルバーはそのまま使ったけれども、(目は)差別化したかったんです」と説明する。

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