フジ「反町隆史」VS テレ朝「遠藤憲一」 新たに始まる仁義なきドラマ対決 「視聴率は時代遅れ」のウソ
ドラマ枠消滅の理由は視聴率
篠原涼子(50)とバカリズム(48)がダブル主演した春ドラマ「イップス」が振るわなかったフジテレビの金曜午後9時台の連続ドラマ枠が、9月いっぱいで消える。代わりに10月から火曜午後9時台に連ドラ枠が新設される。同時間帯ではテレビ朝日も連ドラを放送中。正面衝突となる。初戦の主演はフジが反町隆史(50)、テレ朝は遠藤憲一(63)が務める。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】
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フジの金曜午後9時の連ドラ枠は1年間の短命だった。ムロツヨシ(50)が主演し、平手友梨奈(23)が助演した「うちの弁護士は手がかかる」(昨年10~同12月)で始まり、現在放送中で山田涼介(31)主演の第4作「ビリオン×スクール」(7~9月)で終わる。
なぜ、幕を閉じるのか? 理由はもちろん視聴率しかない。
元フジのドラマ部門のヒットメーカーで、6月に系列の関西テレビの新社長に就いた大多亮氏(65)は就任会見で視聴率についてこう語った。
「ずっと取りたいと思ってきた。(視聴率は)支持率であり、人気率であり、ヒット率」
ストレートな発言だった。このところ「視聴率は関係なくなった」「もう視聴率は時代遅れ」といった根拠のないデマが公然と流されているため、それを打ち消したいという思いもあったのではないか。デマはテレビ界の健全な競争と発展の妨げとなる。
視聴率はCMの値段を決める唯一の物差しだから、民放にとって生命線なのだ。民放のビジネスモデルが根本から変わらぬ限り、将来においても同じ。無論、視聴者それぞれの番組への評価は別次元の問題である。
「イップス」も視聴率が振るわなかった。6月21放送の最終回は個人視聴率(全体値)が2.7%でコア視聴率(対象を13~49歳に絞った個人視聴率)は1.4%だった。
同日のほかの民放は日本テレビ「金曜ロードショー ミッション:インポッシブル3」が個人4.2%、コア2.7%。テレ朝「ミュージックステーション」が個人3.4%、コア3.3%。TBS「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」が個人4.3%、コア2.6%。テレビ東京「田舎くれんぼ」が個人1.4%、コア1.4%。
「イップス」の最終回は民放5局中4位。最下位こそ免れたものの、かなり厳しい成績だった。
もっとも、金曜午後9時台からの撤退はこの作品の不調だけで決まったわけではない。前作も不振だったからであり、その作品はこの放送枠2作目の「院内警察」(1月~3月)である。
「院内警察」の3月22日放送の最終回は個人2.4%、コア0.9%。どちらも民放で最下位だった。第1作「うちの弁護士は手がかかる」は昨年12月22日放送の最終回で個人3.7%、コア1.4%を記録し、気を吐いたものの、あとが続かなかったのである。
フジは裏環境も見た
また、フジは“裏環境”も考えたのだろう。裏環境とは、その時間帯に他局が放送する裏番組のこと。たとえば、途方もなく強い番組が裏にある場合、捨てゲームのような番組を放送するケースもある。何をやっても勝てないからだ。逆に、弱い番組は潰しにかかる。
フジの金曜午後9時台の場合、裏環境で特に影響があったのは「金曜ロードショー」。スタジオジブリのアニメや大作映画を次々と流すため、映像による物語を観るのが好きな視聴者を大量に奪われた。フジにとって厚い壁になった。
一方でコア層は「ミュージックステーション」と「金曜日のスマイルたちへ」に流れやすいから、フジは視聴者のターゲットを絞りにくかったようだ。企画に迷いが見られた。
第1作「うちの弁護士は手がかかる」と第3作「イップス」、第4作で学園物の「ビリオン×スクール」はコア狙いが明白だが、第2作「院内警察」はシリアスな医療サスペンス。中高年向きにしか見えなかった。連ドラ枠はターゲットが明確でないと、視聴者が定着しにくい。典型例は若者狙いの「月9」(月曜午後9時)とファミリーをターゲットにしたTBS「日曜劇場」(日曜午後9時)である。
10月からのフジの金曜午後9時台はヒロミ(59)がMCとして仕切るトークバラエティになる。今度は中居正広(51)がMCの「金曜日のスマイルたちへ」とぶつかることになる。
一方で、フジは10月から火曜午後9時台に連ドラ枠を新設する。同じ時間帯にはテレ朝も連ドラを放送しているから、ここでも衝突する。第1作はどちらも男性主演作となる。
フジは反町隆史が主演。反町のフジ系での主演連ドラは「グッドライフ~ありがとう、パパ。さよなら~」(2011年)以来、実に13年ぶりとなる。この作品は関西テレビの制作だったため、フジがつくったドラマとなると、「GOLD」(2010年)以来、14年ぶりだ。
竹野内豊(53)とダブル主演した「ビーチボーイズ」(1997年)や「GTO」(1998年、制作関テレ)などでフジの黄金期を支えた反町が、新しい連ドラ枠の先陣を切る。それは早くからフジによって暗に予告されていた。
まず今年4月のスペシャルドラマ「GTOリバイバル」の放送。制作は関テレだが、両局は定期的に打ち合わせの場を設けている。密に連絡を取り合っている。
次に7月3日に生放送された「2024 FNS歌謡祭 夏」への反町の出演。往年のヒット「POISON」を歌った。フジが現在の反町に熱い視線を注ぎ、視聴者にも注目してもらいたいことを示したのである。民放によくある手法だ。
迎え撃つテレ朝の10月からの新連ドラは池井戸潤氏の人気小説を原作とする「民王」(2015年)の第2弾。主人公の首相役は遠藤憲一(63)だ。第1弾は深夜帯(金曜午後11時15分)だったが、高視聴率を得たため、スペシャルドラマもつくられた。ギャラクシー賞を得るなど評価も高かった。
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