「東京大学」が40億円寄付金を“10億円運用損” 取り返せるのはいつに
米ハーバード大学は、寄付金などを運用した資産が約7兆円と、お金の面でも世界一といえる大学である。東京大学もそれを目指して「東京大学基金」での運用を本格スタートさせたのが、2018年のこと。わが国トップの大学だけあって、今では年間約40億円が集まるという。
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「主に寄付をしてくるのは、卒業生などの個人やOBがいる法人ですが、中には東大とは直接関係がない方もいます」(東京大学関係者)
寄付すると特典もある。芳名録に名前が記され、30万円以上を贈った人は、かの安田講堂に銘板が飾られる。税制上の優遇措置があるのはもちろんだ。
「寄付者の中にはお金だけではなく株や“金”などの現物を寄付する人もいます。ただし、今のところ、ビットコインなどの暗号資産は受け付けていません」(同)
集まったお金は資産運用に回され、その利益を附属図書館への支援や外国人留学生に対する奨学金といった事業に使うという仕組みである。
マイナス10億円
ところが、基金の「活動報告書 2022」を見ると、22年度(22年4月~23年3月)の株式等の運用益・評価額等がマイナス10億3102万円とある。この年度の株価(日経平均)は、横ばいだっただけに、寄付金の4分の1もの損失を出してしまうのは、どうなのだろう。ちなみに、基金の資金運用管理委員会には、金融界で著名なコモンズ投信会長の渋澤健氏も基金アドバイザーとして名前を連ねている。新1万円札の顔となった渋沢栄一翁の玄孫(やしゃご)だ。
東京大学基金に聞いてみると、
「(損失の)ほとんどは同期間中の金利上昇に伴う目的指定寄付金の時価評価損です」(事務局)
どういうことなのかというと、「目的指定寄付金」は大半が債券で運用されており、この年度に行われた米国の強烈な利上げの影響を受けてしまったのだ。一般的に債券は利上げされると値段が下がる。もっとも、基金によると、あくまで「含み損」なので、長期では回復する見込みだという。
「活動報告書において『株式等の運用益・評価額等』というタイトルを付けたことで、株式投資に失敗したのではないかとのご懸念やご質問を複数の寄付者の方からも頂きました」(同)
基金は、昨年4月から米投資ファンド、ブラックロック・ジャパンの元最高投資責任者を迎えて、投資先も大幅に変更している。10億円を取り返せるのは、いつになるのだろうか。