バラエティの「勝ち組」「負け組」 日テレが攻めた「ニノさん」ゴールデン進出の勝算

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「オモウマい店」の人気の秘密

 ここで7月第1週(1~7日)のバラエティの視聴率の上位5番組、下位5番組を見てみたい。現代人が求めているバラエティ像が浮き彫りになるはずだ。(ビデオリサーチ調べ、関東地区)

【視聴率上位5番組】
日本テレビ「ヒューマングルメンタリー オモウマい店」(火曜午後7時)2日 個人6.2%、コア4.4%
テレビ朝日「ザワつく!金曜日」(金曜午後6時50分)5日 個人6.1%、コア1.8%
TBS「バナナマンのせっかくグルメ!!」(日曜午後7時)7日 個人5.5%、コア3.0%
日本テレビ「踊る!さんま御殿!! 2時間スペシャル」(火曜午後8時)2日 個人5.9%、コア4.4%
日本テレビ「1億人の大質問!?笑ってコラえて!」(水曜午後7時54分。一部地域のみ午後8時)3日 個人5.6%、コア2.9%

 人間を前面に出すスタイルのグルメ番組は中高年が視聴者の中心だが、「オモウマい店」は若い世代もよく観ている。取り上げる店を一方的に持ち上げず、店主を美談の人で終わらせず、店の欠点や店主の困ったところも取り上げるのがいいのだろう。

 それでいてMCのヒロミと進行の小峠英二(48)の愛情あるトークが絶妙で、店主に決して恥をかかせない。番組が店と店主を大事に思っているところが人気の一番の理由と見る。

「ザワつく!金曜日」は中高年の人気は絶大であるものの、若い世代にはあまり観られていない。メインの長嶋一茂(58)、石原良純(62)、高嶋ちさ子(55)が50代以上で、昭和の思い出話も多いから、当然そうなる。制作者側も納得ずくだろう。

「バナナマンのせっかくグルメ」はずっと人気高。設楽統(51)と日村勇紀(52)のバナナマンによる番組はテレビ東京「YOUは何しに日本へ?」(月曜午後6時25分)なども好評を博している。一部で設楽が視聴者に極めて不人気と伝えられたが、それを信じるテレビ、芸能関係者はいないだろう。

「踊る!さんま御殿!!」は明石家さんま(69)が全権MC。ベテランテレビディレクターによると、さんまが番組の細部まで自分で決める。その分、たとえ視聴率が悪くてもスタッフに責任転嫁しない。プロである。

「笑ってコラえて!」は放送開始から28年。いまだ古くならないのは驚きに値する。流行に左右されず、地道に生きる市井の人たちにカメラを向け続けているからではないか。

 7月第1週は日テレ「世界の果てまでイッテQ!」(日曜午後7時58分)、テレ朝系「ポツンと一軒家」(同)の放送がなかった。6月30日放送は「イッテQ」が個人6.6%。コア5.7%。「一軒家」が個人7.0%、コア1.4%。どちらも大勢の人が観ている。

「イッテQ」はファミリー層に圧倒的人気を誇るから、コアが高い。「一軒家」は自然や人間ドラマに関心の深い中高年にファンが多いため、コアは低いものの、個人は高い。どちらも現代のテレビ界を代表する番組と言える。

 次に視聴率面で苦戦中の番組である。

【視聴率下位5番組】
TBS「櫻井・有吉THE夜会」(木曜午後10時)4日 個人2.5%、コア2.0%
フジテレビ「酒のつまみになる話」(金曜午後9時58分)5日 個人2.5%、コア2.0%
フジテレビ「オドオド×ハラハラ」4日 個人2.0%、コア2.0%
テレビ東京「デカ盛りハンター」(金曜午後7時25分)5日 個人1.3%、コア0.9%
テレビ東京「有吉ぃぃeeeee!~そうだ!今からお前んチでゲームしない?」(日曜午後10時)7日 個人1.2%、コア1.3%

「ザワつく!金曜日」という強敵も

 10月からのバラエティ界にはほかにも大きな動きがある。ヒロミはフジが金曜午後9時台で始める新番組でMCを務める。現在は連続ドラマ枠で、「ビリオン×スクール」が放送されている。トーク中心のバラエティになるようだ。

 バラエティ好調の日テレもやはり動く。嵐の二宮和也(41)がMCを務めている「ニノさん」(日曜午前10時25分)を金曜午後7時台に昇格させる。「クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?」の後番組となる。

「クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?」の6月28日放送の視聴率は個人4.5%、コア2.5%。同時間帯では個人が6局中4位でコアは同2位。決して悪いとは言えないのだが、それでも「ニノさん」に差し替える。攻めの姿勢だ。

「ニノさん」は2013年に水曜深夜の30分番組として始まり、2020年から日曜午前の1時間番組になった。現在は二宮が菊池風磨(29)らとともにゲストを迎え、トークなどを繰り広げる。二宮のキャラクターが前面に押し出された番組だ。

 視聴率は上々で、7日放送は個人が4.0%。特にF1層(女性20~34歳に限定した個人視聴率)とT層(13~19歳に限定した個人視聴率)が高く、それぞれ3.7%と1.7%だった。

 同時間帯にはTBS「サンデー・ジャポン」(日曜午前9時54分)とフジ「ワイドナショー」(同午前10時)があるものの、F1もT層も両番組より2~3倍の視聴率を獲っている。

 金曜午後7時台には「ザワつく!金曜日」という強敵がいる。しかし、中高向けの色合いが強い番組なので、「ニノさん」と視聴者を奪い合うことはない。日テレはそう踏んだのだろう。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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