倒産、事故を経て57歳で“時の人”に 『血と骨』梁石日さんの豪快人生【追悼】
「お金がない時でも皆に振る舞ったり」
94年には大阪の兵器工場の跡地から鉄屑を盗む在日窃盗団を描いた『夜を賭けて』で直木賞候補に。そして『血と骨』発表、登場人物の内面描写で心理を語るより、言動そのものを具体的に描いて伝える梁さんの持ち味がよく発揮されていた。
「劇団・新宿梁山泊をはじめ、梁さんの周りに自然と人が集まった。でも束ねたりしません。豪快に見えて繊細でした」(辺さん)
自分が人に言いたくないことこそ人々が読みたがっているものだ、と実践しても不快にまではさせない。
「若い時から破天荒でした。お金がない時でも皆に振る舞ったり、高級時計を買ってすぐにしまったと後悔したり、人柄は昔から全然変わらない。文学的に自由人であり続けた」(金さん)
6月29日、87歳で逝去。
在日文学などと称し文学を枠にはめるのはおかしい。人間の普遍的なドラマなのだから、と語っていた。