坂本冬美、30年以上焦がれ続けた桑田佳祐への想いが“ラブレター”で成就した瞬間を振り返る「お見かけするやいなや、突進しました(笑)」

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記録と記憶で読み解く 未来へつなぐ平成・昭和ポップス 坂本冬美(全4回の第2回)

第1回【坂本冬美、「また君に恋してる」の人気ぶりに「戸惑いもある」と告白… 『紅白』で9回歌われてきた「夜桜お七」の誕生秘話も】からの続き

 この連載では、昭和から平成初期にかけて、たくさんの名曲を生み出したアーティストにインタビューを敢行。令和の今、Spotifyなどの音楽ストリーミングサービス(サブスク)で注目されている人気曲をランキング化し、各曲にまつわるエピソードを深掘りすることで、より幅広いリスナーにアーティストの魅力を伝えていく。

 今回フィーチャーするのは演歌歌手・坂本冬美。インタビュー第1回では、代表曲となっているSpotify人気曲第1位の「また君に恋してる」と2位の「夜桜お七」を中心に語ってもらったが、第2回では、ランキング上位のシングル曲について、さらに深掘りしてみた。

「ブッダのように私は死んだ」で念願の桑田佳祐からの楽曲提供が実現

 まず、Spotify9位に2020年のシングル「ブッダのように私は死んだ」がランクイン。こちらはサザンオールスターズの桑田佳祐が作詞・作曲・編曲・プロデュースを手がけている。桑田の他アーティストへの楽曲提供は実に23年ぶり。桑田いわく、この曲は“歌謡サスペンス劇場”であり、ストーリー性が高く、坂本もこれまでにないほど緩急の効いたボーカルを聴かせている。

「『ブッダ~』が上位に入っていて嬉しいですね~!!実は、デビュー当初から、“いつか桑田さんに曲を書いてもらえたら……”という憧れがずっとありまして。でも、歌手活動を始めてから30年間、お逢いする機会もありませんでした。

 そんな中、(自身も出場していた)’18年の『紅白歌合戦』でサザンオールスターズのみなさんが大トリとして出られた時、生の歌声をすぐそばで聴かせて頂いたんです。近くで拝見するのも初めてだったのですが、桑田さんを見つけるやいなや、“握手してください!”と突進していきました(笑)。

 その一件のあとも、デビューのころから抱いていた(楽曲提供への)夢が沸々とわいていたので、うちのスタッフに相談したら、“一度、手紙にその気持ちをしたためてみたらどうですか?”と言われ、これまでの想いを一生懸命に書いてお渡ししました。そうしたら、なんとその願いが叶(かな)ったんです! レコーディングは桑田さん立ち合いのもと、作詞、作曲、コーラスやギター演奏までも桑田さんご自身でしてくださいました」

 本作は、「箸の持ち方だけは無理」「みたらし団子が食べたい」といった歌詞が非常にユニークだが、これは坂本自身のエピソードも盛り込まれているのだろうか。

「いえ、そうではなく(笑)、“歌謡サスペンス劇場”として、ひとつの物語となっているんです。そこに“みたらし団子”という具体的なワードを盛り込むことで、より強くイメージさせるというのも、さすがの桑田さんですよね。この曲もステージでは、必ずといっていいほど歌っています。

『ブッダ~』をいただいた時には、さらに自分の殻を破ろうと思ったんです。それまでは、『夜桜お七』も、デビュー当時から披露してきた男性目線の楽曲も、演じるように歌いつつ、どこかで自分自身を保ってきた部分がありました。でも今回は、自分のキャラクターはさておき、(恋愛のもつれから、殺されてしまうという)主人公になりきろうと、照れくささなど捨てて、生まれ変わった気持ちで臨みました」

 その殻を破った影響なのだろうか、翌年の’21年にリリースされたカバー曲中心のアルバム『Love Emotion』に収録された「哀歌(エレジー)」(オリジナル:平井堅)や「傷心」(オリジナル:大友裕子)などでは、愛と狂気が入り混じったような坂本冬美の絶唱が堪能できるのも感慨深い。

「そうですね、それまでカバー曲を歌う時は、感情移入し過ぎないように意識していたのですが、『哀歌』と『傷心』は特に振り切っているので、やはり『ブッダ~』での経験が大きく影響していますね!」

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