これが乗り物なの? 「電動スーツケース」“無免許運転で送検”の衝撃

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 インターネットで「電動スーツケース」と検索すると、10万円前後の商品がずらりと出てくる。荷物が重たくても、スーツケースに跨(またが)ってハンドルを操作するだけで、スイスイ移動できるのだ。実に楽チンそうだが、だからこそ問題なのだという。

「電動スーツケース」を“無免許運転”

 事実、6月25日に大阪府警福島署が、電動スーツケースに乗って歩道を走行したとして、中国籍の女性留学生(30代)を書類送検したのである。

「当署の警察官が、見慣れない乗り物を運転している女性を路上で“現認”したのは3月31日でした。そこで職務質問したところ、電動のスーツケースだと分かったのです」(福島警察署幹部)

 それから送検まで3カ月近くかかったのは、この電動スーツケースがどんな車両に区分されるのか、そもそも車両なのか、府警本部とやり取りを続けていたからだ。

「調べてみると、スーツケースは時速13キロ出せることが分かり、その出力から原付一種(50cc以下)に該当すると判断しました。女性が免許を持っていなかったことから、無免許運転での送検となったのですが、彼女は電動スーツケースが乗り物にあたるとは考えておらず、免許など不必要と思っていたそうです」(同)

違法ではないけれど

 もちろん、電動スーツケースが違法な存在かというと、そうではない。実際に事件が報道されるまでは、東京・秋葉原の家電量販店で売られていたし、盛り場ではスーツケースに乗ってウロウロする観光客が見られた。冒頭で紹介したように通販サイトでは今も普通に販売中である。聞けば、「移動用小型車」に該当すると歩道で乗れるようだ。昨年4月から新たに定められた車両区分で、警察庁によると、時速6キロ以下、道路交通法施行規則で定められたサイズ要件を満たし、さらに指定の標識(シールのこと)を目立つところに貼ってあれば「歩行者」としてみなせるという。

 だが、それが時速何キロ出るのかなんて、見ただけで判断できるのだろうか。車両に関するもう一つの法律「道路運送車両法」を管掌する国土交通省の担当者が言う。

「見た目で分かりにくいのは電動スーツケースだけではありません。最近は電動のスケートボードなど、遊具と車両の境界が曖昧なものも出てきています」

 次々と出てくる新しい乗り物に、法律が追いついてゆくのは簡単ではない。

週刊新潮 2024年7月11日号掲載

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