日本はH5N1型「鳥インフルエンザ」への危機意識があまりに低い…乳牛への感染が見逃されている可能性
期待される「日本版CDC」
政府は7月2日、新型コロナウイルスのパンデミックの経験を踏まえ、重大な感染症への対応をまとめた「新型インフルエンザ等対策政府行動計画(行動計画)」を約10年ぶりに改訂することを閣議決定した。
【図表を見る】H5N1型「鳥インフル」発生国・地域とヒトでの確定症例数は
新型コロナウイルスの感染拡大で行動制限が長期化したことにかんがみ、「準備期」「初動期」「対応期」毎に対策をそれぞれまとめ、「柔軟かつ機動的」に運用する方針を明記したことが主な特徴だ。
政府は次の感染症危機に備える新たな専門家組織「国立健康危機管理研究機構」を来年4月1日に設立することも決定した。新機構は、病原体の分析を担当する国立感染症研究所と、感染症患者を受け入れる病院を運営する国立国際医療研究センターが統合して発足することになっている。
新機構は感染症の調査・分析から臨床対応までを一貫して行うとともに、ワクチンや治療薬の開発を支援するなど包括的な対応を行うことが責務だ。米疾病予防管理センター(CDC)にならって「日本版CDC」となることが期待されている。
国際社会が警戒するH5N1型インフル
日本の感染症対策は強化されているものの、筆者は「このままでは新型コロナの二の舞になってしまうのではないか」と危惧している。国際社会が警戒を強めている鳥インフルエンザ(H5N1型)ウイルスへの危機意識があまりに低いからだ。
農林水産省は7月4日、昨年秋以降に発生した今シーズンのH5N1型インフルエンザについての調査結果を公表した。それによれば、昨年11月から今年4月までの鶏の殺処分数は昨シーズンに比べて95%減少して約85万6000羽、鶏卵の6月の全国平均小売価格(1パック10個入り)は前年比19%低下して246円だった。
日本では「H5N1型インフルエンザの脅威は低下しつつある」との認識が広まっているようだが、はたしてそうだろうか。
国際保健機関(WHO)によれば、H5N1型インフルエンザのヒトへの感染は2003年から今年4月初めまでに合計889例、うち463例で死亡している。致死率が52%の猛毒ウイルスだが、ヒトからヒトへの感染は起きていない。
H5N1型インフルエンザの流行は2010年代後半に一旦収まったが、2020年頃に欧州で再び感染が広がり、米国や日本などでも大流行した。気がかりなのは、これまでH5N1型インフルエンザに感染しにくいとされていた乳牛に感染が広がっていることだ。
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