パパ活する娘を叱ったら「お父さんこそ」と言われて…反論できず 51歳夫が過ごす崩壊前夜の家庭環境

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蘇る学生時代の後悔

 娘は着替えてキッチンに入り、当然のように母親を手伝っている。遼平さんのほうは見ようともしなかった。

 息子はその日、友だちの家で夕食をごちそうになるということだったので3人での食事が始まった。遼平さんはチラチラと娘を見る。娘は目をそらす。だんだん腹が立ってきて、遼平さんは「もうあんな男と会うのはやめなさい」と言った。

「なに、どんな男と妻が聞くので、『街なかの喫茶店で、オレくらいの年齢の男と親しそうにしていたんだ』と言いました。妻はヒッと息をのんで『どういうことなの?』と娘を問い詰めた。『パパ活してるの。お金稼いで学費にあてるから』と娘が挑戦的な口調で言うんです。パパ活って何だ、おまえはあんな男に体を売っているのか、親をバカにするなよと、なぜか僕は異常に激してしまって」

 ただ、言った瞬間、学生時代に恋人を追いつめたことを思い出した。あのときと同じことを言っている。恋人の顔が鮮明に目の前に出てきた。

「すると娘が『体を売るわけないでしょ、何言ってるの。おとうさんこそ、誰かの体を買ってるくせに。何が再就職よ、風俗で遊んでるくせに。おかあさん、もうこんな人と離婚したほうがいいよ』と一気に言ったんです」

「娘に何も言えないわね」

 どうしてバレたのかわからない。あとから娘が妻に語ったところによると、ある日、遼平さんがホテルに入っていくのを娘が目撃したらしい。その数分後、なんとなく素人っぽくない女性がホテルに入っていった。娘はホテルの前のファストフードに入って入り口を監視していた。1時間後、遼平さんと女性がホテルを出てきて左右に分かれた。娘が女性を追っていくと、風俗店に入っていったというわけだ。

「妻には『娘に何も言えないわね』と言われました。僕が風俗へ行くことと、娘がパパ活をすることは全然意味合いが違うと言ったけど、『まあ、彼女は未成年だからね。でも意味合いは違っても、あなたが何を言っても説得力はない』と。それはそうなんですが……。紗織は『私が娘からきちんと聞いて解決するから』と軽く言うんです。女親って、ああいうときにどうして動じないんでしょう。僕はもう、娘がとんでもないことをしているとしか思えないのに……」

 あの子だってバカじゃない、わかってるわよ。妻はそう言った。数日後には「もうやらないって。本当に学費のことを心配していたみたいだから、これ以上、つつかないほうがいいと思う」と報告してきた。

「情けないですね。借金背負って娘を身売りする、だらしない男が出てくる落語みたいじゃないですか」

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