パパ活する娘を叱ったら「お父さんこそ」と言われて…反論できず 51歳夫が過ごす崩壊前夜の家庭環境
たまたま見つけた看板に
その後、少しずつ世の中の緊張がほどけてきて、だんだん人にも会えるようになった。妻に甘えるわけにもいかないと、彼は意地になって仕事を探し続けた。
「あるとき疲れて駅近くの広場で缶コーヒーを飲みながらぼんやりしていたんです。目の前にふっと風俗の看板が見えた。電話番号が書いてあったので、なにげなく電話してしまった。そして近くのホテルで女性と待ち合わせしたんです」
派遣型の風俗だった。風俗は独身時代、1、2回行ったことはあるが興味がもてなかった。それなのにホテルで待ち合わせた女性に、彼は心の中をぶちまけてしまった。女性は親身になって聞いてくれた。性的サービスはいっさいする間もなく、話をしただけで時間がきた。
「また会ってくれるかなと聞いてしまいました。今度はもっと楽しい話をするから、と。僕はその彼女に救われた気がしたんです。実は彼女の前で涙をこぼしてしまった。彼女はずっと僕の背中を撫でたりトントンと優しく触ってくれたりした。最後は頭をぎゅっと胸で抱きしめてくれて。安心したんですよ。子どもに返ったようだった」
幼くして母を亡くした彼だからこそ、そういう女性の振る舞いに心を揺さぶられたのかもしれない。その後も彼は職探しに疲れると彼女を指名した。
「そしてあるとき、ようやく仕事が決まったんです。学生時代の先輩のツテでした。収入は落ちるけど、もはやそれはどうでもよかった。話を聞いてくれて『ぜひ来てほしい』と言われたとき、がんばってきてよかったと思えました」
制服姿の娘と、中年男が…
風俗の彼女に知らせようと、繁華街を歩いていると喫茶店に見覚えのある姿を確認した。娘だった。友だちとお茶でもしているのかと見ると、制服姿の娘の前に座っているのは自分と同じような中年男だった。遼平さんの鼓動が早くなった。繁華街とはいえ、じっと立って喫茶店を覗き込んでいるのは周りから見ると妙だろう。だが、このまま通り過ぎるわけにもいかなかった。
「近くの電柱の陰からチラチラみていたら、しばらくして娘がその男の隣に座って手を握っているんです。いくらなんでもじっとはしていられない。飛び出して店に入りました」
娘の前に立ち、「何をしてるんだ」と言った。娘は急に立ち上がると、鞄をもって走っていく。遼平さんはあとを追った。外へ出て娘を追いかけると、娘はピタリと立ち止まって振り返った。
「何、と娘が立ちはだかっていたので、ちょっとびっくりしました。開き直っているというか居丈高というか。『何をしているのかと聞いたんだ』と言ったら、娘は平然と『パパ活』と言ったんです。いやもう、頭がこんがらがって何も言えなかった。娘はそのまま去っていきました」
遼平さんもぼんやりと駅に向かった。家に帰り着くと、娘はすでに帰宅していた。「あら、今日はみんな早いのね。私も早めに帰ってきてよかった」と妻は料理を作りながら微笑んだ。勤務先が決まったと妻に言うと、「連絡してくれれば、ケーキでも買ってきたのに」と笑ってくれた。
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