ロッテファンが狂喜乱舞した“伝説の一夜” まるで漫画のような結末を迎えた「ボーリックナイト」を振り返る

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どちらも負けられない一戦

 同点の延長イニングに均衡を破る3ランが飛び出した。だが、誰もが「これで決まった!」と確信した矢先に、あっと驚く“漫画のような結末”が待っていた。そんな野球の醍醐味を十二分に満喫させてくれた伝説の名勝負が、今もロッテファン、パ・リーグファンの間で語り継がれる2001年7月9日のダイエー戦、別名“ボーリックナイト”である。【久保田龍雄/ライター】

 同年のパ・リーグは、前年最下位の近鉄が開幕から旋風を起こし、7月9日の時点で首位をキープ。2位には2連覇を狙うダイエーが0.5ゲーム差で食い下がり、ロッテも5位ながら、近鉄にわずか4ゲーム差と史上稀にみる大混戦が続いていた。

 ダイエーはこの日のロッテ戦に勝てば、6月24日以来の首位復帰。一方、7月7日から2連勝で勝率を5割に戻したロッテも、この勢いを持続し、さらに上を狙おうとしていた。

 どちらにとっても負けられない一戦は、ロッテ・ミンチー、ダイエー・倉野信次が先発。先手を取ったのは、ダイエーだった。

 2回2死から城島健司が左中間に二塁打を放ち、秋山幸二の左前タイムリーで1点を先制。4回にも、1死から小久保裕紀が三ゴロエラーで一挙二進した直後、松中信彦が左中間席に飛び込む2ランを放ち、3対0とリードを広げた。

代打の切り札が「勝ち越し3ラン」

 その裏、3回まで毎回走者を出しながら、あと1本が出なかったロッテも、先頭の大塚明が左越え二塁打、松本尚樹も左前安打で無死一、三塁と反撃し、酒井忠晴の左前タイムリーで1点を返す。

 5回にも先頭の福浦和也が右前安打で出たあと、直近3試合で2本塁打と調子を上げているフランク・ボーリックが左翼席に同点2ランを放ち、倉野をKOした。

 ダイエーもすぐさま反撃する。6回1死から四球の秋山を一塁に置いて、ミッチェルが左越え2ラン。5対3と再び突き放した。

 だが、ロッテもその裏、2死無走者から小坂誠が右前安打で出塁後に二盗。サブロー四球で一、二塁から福浦が2番手・長冨浩志をリリーフした渡辺正和から左前にポトリと落ちるタイムリーを放ち、一挙同点。福浦も二塁に進んだ。

 さらに、ボーリック四球で再び2死一、二塁、メイも右前にタイムリーを放ち、ついに6対5と逆転に成功した。

 7、8回は両軍無得点。ロッテは9回に守護神・小林雅英を投入し、逃げ切りを図るが、ダイエーも簡単には引き下がらない。先頭の柴原洋が中前安打。1死後、二盗と井口資仁の左前安打で一、三塁とチャンスを広げ、小久保の中犠飛で6対6の同点に追いついた。

 土壇場の同点劇で流れを引き寄せたダイエーは、延長10回にも1死から秋山、浜名千広の連打で1死一、三塁としたあと、代打の切り札・大道典嘉が6番手・藤田宗一から右越えに勝ち越し3ラン。これで勝負あったかに思われた。王貞治監督も満を持して、守護神・ペドラザをマウンドに送り出した。

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