「パチンコの景品交換所か」とアンチの声も…自己嫌悪に悩んでいた「覆面シンガー」が前代未聞の握手会を行う背景

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

劇場版アニメと大型コラボ

 ここまではAdoの前史にあたるキャリアだ。現実社会から逃避し、オンラインの世界に活路を求めたAdoにとっては願い通りの道だったはずだ。ところが、レーベル側はさらなる展開をAdoにもちかける。それが劇場版アニメ「ONE PIECE FILM RED」(2022年8月6日公開)との大型コラボレーションだった。

 Adoはメインキャラクター「ウタ」の歌声を担当。主題歌「新時代」は中田ヤスタカ、「私は最強」はMrs. GREEN APPLEの大森元貴、「逆行」はVaundy、「風のゆくえ」は秦基博が担当。Adoはオンラインの世界から飛び出しリアルな現場で、J-POP界の大物ミュージシャンとタッグを組み商業的に大成功を収めた。

 実は同映画の公開半年前(2022年2月)にある“事件”が起こった。Adoは日本テレビ系「マツコ会議」に出演し、マツコ・デラックスとスタッフにだけ素顔を見せてトークを行った。Adoは「どうやったら自分のことを好きになれますかね?」と質問すると、マツコは「血反吐が出るくらい自分のことが嫌い」「好きにはなれないけど労わってあげたくなってくる」「だから嫌いなままで全然大丈夫よ」と、マツコらしい言葉遣いで温かく助言した。

 音楽ライターは「マツコのこの言葉がAdo背中を押したのは間違いありません。オンラインの世界に逃避していたAdoが、大人との交渉が必要な現実の商業社会に進出できたのは、彼女自身の内面に大きな変化があったからでしょう。まさにAdoにとって“新時代”が到来したというわけです」と分析する。

 こうしてAdoは「マツコ会議」放送後の2022年4月に、初のワンマンライブを都内で開催。全国ツアーに続いて、今年2月からは初の世界ツアーを展開した。さらに、4月には東京・国立競技場での単独ライブを、女性ソロアーティストとして初めて成功させる。Adoはメジャーデビューからわずか3年半で、日本の音楽シーンのトップランナーに加わったのだ。

 前出の音楽ライターがこう明かす。

「国立競技場のステージでは、ボックスに入って歌唱するいつものスタイルを守り、照明を後ろから強く当てることで観客席に顔が見えないようにしていました。しかし、前列の客は、Adoがステージを移動する際、うっすらと顔が見えていたようです。多少、顔がバレても問題なし、という覚悟がすでに芽生えていたのかもしれません」

次ページ:ファンから直接的な承認獲得へ

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。