“非効率な作戦”とわかっているのに…日本のプロ野球で「送りバント」は、なぜ減らないのか? 歴史的な「投高打低」に拍車も

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今年は明らかに“異常”

 今年のプロ野球は、歴史的な“投高打低”と言われている。チーム打率が2割5分を超えているのは、ソフトバンクだけ。パ・リーグ最下位に沈む西武は打率.203と1割台が見えている(7月3日終了時点)。

 極端に「飛ばないボール」を使用して問題となった2011年と2012年と比較しても、1試合あたりのチーム得点や安打数は今年の方が下回っている。<2011年と2012年>、そして、<直近5年間>のデータを並べると、今年は明らかに“異常”だ。

・2011年:チーム得点3.28点 チーム安打8.04本 チーム本塁打0.54本
・2012年:チーム得点3.26点 チーム安打8.10本 チーム本塁打0.51本

・2020年:チーム得点4.12点 チーム安打8.26本 チーム本塁打0.89本
・2021年:チーム得点3.75点 チーム安打8.05本 チーム本塁打0.84本
・2022年:チーム得点3.57点 チーム安打8.10本 チーム本塁打0.76本
・2023年:チーム得点3.48点 チーム安打8.06本 チーム本塁打0.73本
・2024年:チーム得点3.13点 チーム安打7.90本 チーム本塁打0.51本

※2024年=7月2日終了時点

 その一方、逆に増えている数字もある。それが送りバントだ。1試合あたりのチーム犠打数について、直近5年間のデータを調べてみた。

2020年:チーム犠打数0.63
2021年:チーム犠打数0.61
2022年:チーム犠打数0.71
2023年:チーム犠打数0.71
2024年:チーム犠打数0.73

※2024年=7月2日終了時点

有効なのは「打率1割以下の選手」だけ

 1試合あたりでみると、わずかな増加に見えるかもしれない。だが、12球団の犠打合計数は、過去5年で最も少なかった2021年で「1040」だったのに対して、今年はシーズンの約半分を消化した現時点で「661」。このペースで進めば、「1300」を超えることになる。

「ヒットとホームランが減っているのだから、送りバントで確実に走者を進めて1点をとりにいくのは当然だ」

 こんな声も聞こえてきそうだが、統計学的に野球を分析すると、「送りバントが非効率な作戦である」ということは常識だ。

 特に、ノーアウト一塁の場面で、強攻よりも送りバントをした方が有効とされるケースは、打率が「約1割以下の選手」に限られているという。プロ野球で考えると、1割以下の選手の多くはピッチャーになるだろう。

 しかし、今年のセ・パ両リーグの犠打数上位の顔ぶれを見ると、投手は、巨人の戸郷翔征がセ・リーグ5位にランクインしているだけで、それ以外は打率1割を超えている野手ばかりである。

 ただでさえ“投高打低”で得点が奪いづらいのに、「送りバントは手堅い」というイメージに固執して、チーム得点を減らす悪循環に陥っているといえる。メジャー・リーグでは、昨年の1試合あたりのチーム犠打数は「0.09」となっており、日本と比べると圧倒的に少ない。

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