いよいよ「Z世代中のZ世代」が職場にやって来た… 彼らに欠けている“力”とは

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21世紀誕生組から新世代に

 Z世代。これは日本ではじまった定義ではなく、欧米から発信された呼び名である。英語圏では「Generation Z」といい、1990年代半ばから2010年代序盤までに生まれた世代を指す。アメリカのコンサルティング会社、マッキンゼー・アンド・カンパニーの定義では、1996年から2012年に生まれた世代ということになっている。

 この世代は、物心がついたときからデジタル端末に触れ、SNSでの交流が当たり前だったデジタル・ネイティブである。また、多様性を重視し、費やした時間と得られる効果や満足度の対比、すなわちタイパ(タイム・パフォーマンス)にこだわるという。プライベートを大事にし、ワーク・ライフ・バランスにもこだわる。そのあたりは、日本と欧米でおおむね共通していると思われる。

 だが、同じZ世代のなかでも、かろうじて20世紀に生まれた世代と、21世紀になって生まれた世代とのあいだには、かなりのギャップがあるというのだ。ちょうど今春から、21世紀生誕組が大学を卒業し、社会に送り出されているのだが、彼らとの大きなギャップを感じて、戸惑っていると話すのは、さる外資系企業に勤務する1998年生まれの、つまりZ世代の男性社員である。

「ちょっと注意されると、すぐに廊下に出て泣いてしまう男性を筆頭に、僕らとくらべてもとにかく打たれ弱いと感じます。上司や先輩が少しでも厳しい姿勢を見せると、明らかに顔を曇らせ、パフォーマンスが落ちる感じがあります。僕らのあいだでは“ここからがほんとうのZ世代だね”と話しています。また、上司や先輩はとてもやりにくそうで、困り果てた感じが見てとれますね」

 たしかに、今年の新卒の新入社員たちは、大学に入学したときにコロナ禍がはじまり、大学に通って対面授業を受ける機会も、友人をつくる機会も、サークルや部活動に勤しむ機会も、かつて例がないほど制限された世代である。人と対面してコミュニケーションをとるのが苦手な人が、どうしても多くなっている。

ハラスメントが排除された世代

 しかし、わずか2~3年だけ年長であるにすぎない世代との「かなりのギャップ」は、それだけで生じるものだろうか。前出の男性社員は、ほかにも原因が考えられると話す。

「僕らの世代も小学校では、先生が怒ったりすることは滅多にありませんでした。でも、中学受験塾では、生徒を怒鳴りつけたり、やる気のない生徒のカバンを投げたりする、いまではとても許されないハラスメント気質の先生が普通にいました。また、中学や高校の部活では、露骨に不機嫌な態度をとられたり、怒鳴られたり、無言で排除されたり、ときには体罰まがいのことをされたりしたものです。つまり、ハラスメントには、子供のころからそれなりに慣れているんです」

 だが、一般的には、1998年や99年生まれも、2001年生まれも、ほぼ同世代のように映ると思うが、2~3年でそれほど大きな違いが生じたのだろうか。

「僕らのころは、少なくとも塾や部活には、先生の昭和的な態度というんでしょうか。先ほど挙げたような、いまだったら処分されると思われるような暴言や振る舞いが残っていました。でも、すぐ下の世代に聞くと、そういう目に遭ったことがないという人がほとんどです。僕らの世代がちょうど端境期で、そのすぐ下から、ハラスメントまがいの行動が、塾や部活からも排除されたのだと思います」

 児童に対する虐待の深刻化が叫ばれ、それを予防すべく、2000年11月20日に児童虐待防止法が施行された。コンサルティング会社クレオ・シー・キューブの岡田康子氏が「パワー・ハラスメント」という語を提唱したのは、翌2001年のことだった。そのころを境にして、教育現場から虐待やハラスメントにつながる行為を追放しようとする動きが、次第に加速したと思われる。

 さらに、学校で生徒が嫌がる行為は「スクール・ハラスメント(スクハラ)」として、避けるべきものとなっていった。そして、ある時期を境に「昭和的な態度」がすっかり追放され、21世紀誕生組はそれを経験せずに育ったということだろう。

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