ソフトバンク、年間100勝ペースで独走中!「4軍」で“歴史的快進撃”を支える“恐るべき下地”を目撃した!

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「実戦経験」を増やすため

 課題は、実戦を通してしか見つからない。試合でのパフォーマンスを通して、選手の評価を下す。

 この大前提に基づいて、ソフトバンクは育成システムを拡大した。まず3軍制、そして2023年からは4軍へと裾野を広げていったのは、育成選手たちの「実戦経験」を確保し、さらに増やしていくためだった。

 選手をモノのように表現するのは本意ではないが、育成選手の支度金は300万円程度。2023年の育成ドラフトでは8人を獲得しているが、支度金だけなら、総額は単純計算で2400万円。支配下選手のドラフト下位選手なら、これくらいのレベルの契約金になってくる。

 つまり、下位指名の選手1人分だと考えれば、この8人から「支配下」に上がり、1軍でプレーできる選手が出てくれば、いわば成功ともいえる。

 そうした“投資効率”も踏まえた上で、育成の選手数を増やし、強化システムの拡大したのだ。育成で入団したところで、育成組織がファームという「1層」だと、1軍の調整組やドラフト上位の有望株の出場が優先され、育成選手の出場機会が非常に限られてしまう。

 それでは育成の進捗状況も成長ぶりも把握できない。ただ、3、4軍のゲームはあくまで「非公式試合」。プロの試合という位置づけではない。

 しかし、ここで経験を積み、課題を見つけ、それを克服していくための練習を重ねていくという、プロ野球選手としての“サイクル”を経なければ、そこから3軍、2軍、1軍へと、その昇格の階段を上っていくことはできない。

「本人たちは分かっているんですけど、いろいろとそれが行動に移せなかったり、それを結果に結び付けられなかったりという、本人たちも分かっている中で、僕らはそれをどうやったら気づかせて、継続させて、つなげていけるかというところなんで」

 斉藤が語るように、育成選手にとって、そのプロセスの第一関門が「4軍」でもある。

 ただ、その環境は決して甘いものではない。

指導者にとっても「勉強」の場

 5回終了後のインターバルでは、独立リーグの選手とともにトンボを持って、ソフトバンクの選手たちもグラウンド整備を手伝う。福岡・筑後の選手寮から試合が行われる地方球場へも、3、4軍は基本的にバス移動になる。

 独立リーグの四国アイランドリーグプラスの4球団とは3軍は定期戦、4軍も交流戦が組まれているが、四国各県での試合をこなし、ナイター後に夜を徹して筑後へ戻るスケジュールも、3軍発足当初から変わらない。

 斉藤ももちろん、4軍のコーチ陣も選手たちと同じバスで移動する。この厳しさの中で、千賀も、甲斐も、周東も這い上がってきたのだ。

 指導者にとっても「勉強」の場である。球団は指導者育成という狙いも4軍制の中に組み込んでいる。前監督の藤本博史は、2、3軍の監督を経験した上で、1軍監督に昇格。現監督の小久保裕紀も、2023年までの2年間、2軍監督を務めている。

 ゆえに、育成の現状も、2、3、4軍の選手たちの特徴も十分に把握できていた。川村や仲田、緒方、笹川、佐藤直らの成長ぶりや潜在能力も、小久保は2軍監督時代にしっかりと掴めていた。

 だからこそ、1軍でも迷うことなく起用できる。育成システムの中で、指導者たちもソフトバンクという組織を熟知し、選手のメンターとして成長していくのだ。

「1軍でも、1軍は1軍の我慢がある。その我慢の質が違うだけですよ。僕らも根気強く言い続ける、やり続けるしかない。僕らもそれは勉強しながら、というところなんですよ」

 育成の最前線に立つ斉藤の、その実感のこもった言葉は重い。

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