【棋聖戦第3局】藤井七冠が3連勝で5連覇 「永世称号」に恩師は何を語ったか

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会場は応募多数で抽選

 会場となった万松寺は、1540(天文9)年に織田信長の父・信秀が織田家の菩提寺として建立した由緒ある古刹。18時46分の終局の頃にはファンたちが境内に駆けつけ、藤井や山崎が出てくる姿を一目でも見たいと待ちわびていた。

 対局場と同じ建物にある「白竜ホール」で大盤解説と感想戦が観覧できるプレミアム席は1万2000円、大盤解説だけなら5000円、「のぶながホール」では1万2000円と3000円。

大盤解説ではABEMA中継のようにAI(人工知能)の数値が出ているわけではない。スマホを見る人もいるが、解説者の話を聞いているほうが分かりやすい。

 藤本五段は藤井優勢と見ていた。解説陣が会場から質問を受けた際は、「タブーかもしれないのですが」という遠慮がちな男性に対し、佐々木七段が「そんな質問、タブーでも何でもないですよ」と答えて場を和ませていた。

「あれだけ勝てば自然に手にするものでしょう」

 藤井が子供時代に通った「ふみもと子供将棋教室」(瀬戸市)を主宰する文本力雄さん(69)に電話で話を聞いた。

 文本さんはこの快挙について「正直、永世称号とかにはあまりピンとこないですね。そんな大げさに騒ぐこともないのではと思います。あれだけ勝てば自然に手にするものでしょうし。瀬戸市の銀座商店街も以前ほどの騒ぎではないようです。勝って当たり前になってしまったのかな。それだけ強いのでしょうけど」と意外にも淡々と話してくれた。

「聡太は子供の頃は負けると激しく泣いた。伊藤さん(匠七段)にタイトルを取られた時、泣きこそしないが悔しくて寝られなかったかもしれません。それをばねにして勝ち続けてくれていると思います」

 藤井は早くも7月6日からの王位戦七番勝負で渡辺明九段(40)の挑戦を受ける。これも防衛すれば2つめの永世称号となるが、数年前まで「最強」とされ藤井に最も多くのタイトルを奪われながらも勝ち上がってきた渡辺九段がどこまでリベンジできるか。
(一部敬称略)

粟野仁雄(あわの・まさお)
ジャーナリスト。1956年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部を卒業。2001年まで共同通信記者。著書に『サハリンに残されて』(三一書房)、『警察の犯罪――鹿児島県警・志布志事件』(ワック)、『検察に、殺される』(ベスト新書)、『ルポ 原発難民』(潮出版社)、『アスベスト禍』(集英社新書)など。

デイリー新潮編集部

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