【棋聖戦第3局】藤井七冠が3連勝で5連覇 「永世称号」に恩師は何を語ったか

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「もう5年もたったのかという気持ち」

 藤井は同学年の伊藤匠七段(21)に叡王のタイトルを奪われた6月20日のショックを引きずっていなかった。記者会見で「永世棋聖」と揮毫(きごう)した色紙を披露したあと、「まだ実感はわかない」「結果を出せたことは素直によかったと思う」「これまで一時代を築いてきた方々が取ってきたというイメージがあるので嬉しく思います」「今後の活躍も問われると思うので(永世棋聖の称号に)見合うように頑張りたい」などと話した。

 最年少記録については「あまり意識していることではなかったが、永世称号の最初のチャンスだったので、つかむことができてよかった」。大盤解説に登場した際は、永世称号について「もう5年もたったのかという気持ちが一番強い」と話した。

 記者から横綱に喩えられ「どんな横綱を目指すか?」と訊かれると、「組んでも組まなくても強い戦いが一番いいかな。どんな形でも対応していける力をつけていくのが大きな目標かなと思っています」と答えた。

 一方、15年ぶりにタイトル戦に登場しながら一矢報いることができなかった山崎は「1、2局と慎重になりすぎて、やりたい手を指せず、差が開いて負けました。3局目は自分なりのベストを尽くそうと思っていました。自分なりに集中して踏ん張って指しましたが、力戦の将棋で読み負けていて完敗でした」と語った。

判断が難しいと思いながら指していた

 この日、大盤解説場に登場したのは、昨年、棋聖戦と王位戦で藤井に挑戦して敗退した佐々木大地七段(29)。聞き役は、現在、最年少棋士として将来を嘱望されている藤本渚五段(18)だ。藤本五段は前日に放映されたNHK杯で山崎を破っている。

 先手は山崎。互いに飛車先の歩を進める「相掛かり」。後手の藤井は玉を左へ寄せて囲ったが、山崎は「中住まい」という薄い囲い方だ。中住まいは玉が二段目に上がり左右の金や銀でバランスをとるため囲っているように見えない。「横歩取り」や「相掛かり」などに見られる急戦対応の陣形だ。

 午前中は本格的な応戦は見られず、落ち着いた手順で37手まで進んだ。午後、藤井が52手目で「4四」に角を打ち込んだのが効果的で、その後に「飛車角両取」の形に持っていき、優勢を築いた。山崎も混戦に持ち込むべく竜と金で藤井玉を攻めて粘ったが、差は開く一方。最後は玉が竜と馬に挟撃され、歩による王手を見て投了した。

 57手目に山崎が「4八金」と指したあたりが中盤から終盤へ入る山場だったが、藤井は58手目に山崎にとって最も厳しいと思われる「7七歩」を指した。自陣の「8三」に山崎が打ち込んだ角を「3八」に引かれて馬を作られると攻めづらくなる。その前に藤井は勝負してきた。佐々木七段は「山崎さんがちょい悪だったのが、差が開いてきた印象」と語っていた。

 藤井は「『2二銀』と上がったのですが、戦いになるとあまりよくない形なので、そのあたりの判断が難しいと思いながら指していました」と振り返った。

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