伝説ユニット「COMPLEX」再結成…「布袋寅泰」と「吉川晃司」は何が変わり、何が変わらなかったか

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“東京ドームの夜”

 2011年の再結成時に「演奏することと歌詞を書いて歌うことには、大きく隔たりがあるので、20年前の仕事の力量を見つめ直すのは、思ったよりもっと辛かった」(再結成特番「吉川晃司、忘れられない夏」2011年7月30日)と、過去に作った曲だけで表現しなければならないもどかしさを語ったこともある吉川だったが、久々に両雄が揃って披露された過去のレパートリーは、これまで両者が積み重ねてきた長年のキャリアや、年を重ねることへのポジティブな側面を感じずにはいられないパフォーマンスであった。

 観衆が両手で作るハートを見つめ、ステージ上の2人も同じ仕草を見せた「LOVE CHARADE」や、ギタリズム柄のダブルネックギターを弾く布袋の姿が目を惹く「CRY FOR LOVE」などは、吉川の歌声と布袋のギターとコーラスによる深みのある表現が顕著であったし、2人の火花を散らすようなギターソロの掛け合いで圧倒される「GOOD SAVAGE」も、パフォーマンスの迫力に磨きがかかっていることを感じさせた。タイアップにも使われた「恋を止めないで」といった疾走感溢れるサウンドと耳に残るキャッチーなリフで“東京ドームの夜”を盛り上げた2人のステージの本編は、「MAJESTIC BABY」と吉川のシンバルキックで幕を下ろしたが……。アンコールを求める熱烈な声援に応えるかのように再登場した2人は、観衆を更なる熱狂の渦に巻き込んでいくこととなる。

COMPLEXの結成時から変わらないもの

 アンコールで再登場した2人が最初に披露したのは、2枚目のシングルとして発売された「1990」だった。開放感のあるサウンドと、吉川が冷戦の終結によるベルリンの壁崩壊や、革命が起こる東欧諸国に実際に出向いて書いたという歌詞も耳に残る楽曲だが、この曲が収録されている2枚目のアルバム『ROMANTIC 1990』も、当時の揺れ動く社会情勢を反映して、極めてメッセージ性の強い作品に仕上げられている。

 新たな時代に移り変わっていく当時の状況や、自由を目指して戦う人々の心情。そして、分断が取り除かれていく世界情勢に思いが描かれたアルバムは、残念ながら音楽性の違いによって、関係が破綻していた両者が顔を合わせることなく制作されたというが……。一度は空中分解してしまった2人が、社会的な危機の到来とともに再会し、共に手を取り合うことができたのも、両者が火花を散らし合うCOMPLEXの側面の一つであり、もしかしたら自然な流れと言えるのかもしれない。

 2度目の“再結成”は、疾走感溢れる「RAMBLING MAN」、東京ドーム初披露の「CLOCKWORK RUNNERS」を経て、今年6月に発生から35年が経ったものの、本国ではその存在すらも認められていない天安門事件に対する怒りと悲しみを歌ったバラード、「AFTER THE RAIN(朱いChina)」で締めくくられた。

「雨上がりの街がやがておとずれて、すべての想いを輝かせてゆくさ」

 そのように歌い上げる吉川からは、今も争いが絶えない現代の状況や、被災地の思いに寄り添い、震災復興後の明るい未来を感じさせるものであった。

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