女性キーで歌いまくる謎の中年男性YouTuber…「ソプラノおじさん」とは何者か

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近年、SNSで昭和のヒット曲をカバーする、“うたってみた動画”が急増している。リアルタイム世代から、当時を知らない若い世代までの様々な投稿を見かけるが、その中で、サングラスをかけた細身の男性が、ひたすらオリジナルの女性キーの高音で歌いまくるチャンネルに心奪われた。

 彼の名は、ソプラノおじさん。1979年、兵庫県生まれで、現在京都市に住んでいるという。昭和のアイドル風にメイクをしたり、昭和アニメのキャラクターを前面に出したりと、より目立つ演出もできるはずだが、彼はただただスタジオでマイクに向かって高音を叫ぶのみ。その媚びない気高さに惹かれて、逢いに行ってみた。

普段の話し声は…

 やって来たのは、ソプラノおじさん(以下、“ソプラノさん”)が暮らす京都市。兵庫県生まれの44歳だという。

 普段の話し声は、よくいるような気のやさしいお兄さん、といった感じで、あの美声が出せる人物だとは想像がつかない。そもそも、どんな風にしてあの歌声を体得したのだろう。もとはプロの歌手を志望していたそうだが、

「13才で声変わりをして、まったく高い声が出なくなったことがきっかけです。それまでは、大ファンだった徳永英明さんの『壊れかけのRadio』も余裕だったのに、突然歌えなくなって。悔しくて、自分なりに特訓を始めました。具体的には、女性ボーカルの曲を無理矢理歌うという(笑)。練習では、スタジオジブリの『さんぽ』や『となりのトトロ』を題材に、最初は裏声でどうにか歌っていました。

 それを毎日繰り返していたら、1年経って男性の高音が出るようになって、もっと行けるんじゃないかと思い、さらに特訓したら、15、16才には地声で女性キーが出るようになったんです」

 ソプラノさんの女性キーの歌声は多少の力みは感じられるものの、ほぼ安定しているのがスゴい。たとえば「3年目の浮気」(ヒロシ&キーボー)でも、男女が入れ替わる所で、素人ならば声がふらつきそうな所を綺麗に歌っている。

「それは大学卒業後、京都にある音楽の専門学校のボーカルコースに2年間通って体得しました。今も、日々トレーニングを積んで、広瀬香美さんの『ロマンスの神様』も歌えるようになりました。ただ、フルコーラスだとアラが出てくる課題もあるので、いつか動画で披露できるよう頑張っています」

31才の“挫折”

 プロを目指していた時期はどう過ごしたのかを尋ねてみた。

「専門学校を出た後は、フリーターをしながら大阪を中心にライブイベントに出たり、梅田や心斎橋の路上で歌ったりしていました。ライブでは、スピッツや荒井由実さんのカバーをしつつ、締めに自分のオリジナルを歌っていて、こういう声で驚かれるという“ツカミ”はあったのですが、なかなか芽が出なくて…」

 そうして、31才の時にスパっと諦めたという。

「このころ、凄い才能のとある女性がシンガーソングライターでデビューを目指しているのを見て、自分などかなわないなとショックを受けたんです。さらに、あるテレビ番組の“ズバ抜けた特技を持った人募集”という企画に応募して、オーディションに合格し全国放送に出演したのですが、テレビのスタジオでは“音の返し”がなく、ぶっつけ本番では実力の半分も発揮できなくて。それがトドメを刺しました(笑)」

 それから、10年以上もの間、カラオケにすら行かず、サラリーマンとして家と勤務地を往復するだけの日々を過ごしていたという。

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