『黄昏流星群』コンビニ版で新たな読者を開拓…弘兼憲史 成人誌が店頭から消え困ったワケは

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コンビニの成人誌が資料になっていた!

渡辺:先生は今のコンビニに不足していると感じているものって何かありますか。

弘兼:この間、どこのコンビニを探してもなかったのが請求書ですね。

渡辺:なるほど。スナックなどが多く集まる繁華街のコンビニなら、まだ請求書もあると思いますが、確かになくなってきていますね。横浜の福富町や伊勢佐木町のコンビニには請求書だけでなく、土地柄ビンゴカードも置いてありましたけど(笑)。POSで分析しているので、コンビニの品揃えって地域ニーズを反映するかたちで、売れる商品にどんどん集中していくんです。

弘兼:コンビニ業界はマーケティングを非常にきっちりしていますよね。コンビニができたとき、僕が一番画期的だなと思ったのはPOSシステムでした。

渡辺:先生は「黄昏流星群」のコンビニ版コミックスで新たな読者を獲得されていますが、あの作品も売れ筋商品として常に多くのコンビニで置かれている、ということです。

弘兼:コンビニ版は普通の単行本よりたくさんの部数が刷られますし、売れ行きも好調みたいです。僕はコンビニに足を向けて寝られませんよ。

渡辺:コンビニの本棚で最後の砦になっているのが漫画です。出版流通の日販がコンビニ雑誌配送から撤退し、2025年以降は二大取次のトーハンへ引き継がれるんですが、それが週刊誌の終わりの始まりとも囁かれています。大手コンビニから成人誌が一掃され、出版物の物流効率が悪化したことが大きいようで。

弘兼:出版社も存亡の危機ですね。

渡辺:コンビニで成人誌に関しては、東京五輪が直接の契機でしたが、末期は売上的にも三日に1冊ぐらいしか売れなくなっていました。やはりネットでアダルト動画が見られる時代なので。2000年代に誰でも立ち読みできる状態は良くないという議論が出て、テープで中身を読めないようにした結果、どんどん表紙が過激になっていったことも世間で物議を醸した一因です。

弘兼:「黄昏流星群」は中高年のラブストーリーなので、画を描くときにコンビニで熟女系の雑誌とか買っていたんですけどね。そういう雑誌が、貴重な資料になったんですが、もう芳賀書店に行くしかないという(笑)。

渡辺:ちなみに、先生はコンビニの女性店員さんで心をときめく方がいて、そのことが若さを保つ秘訣だと、とあるインタビューでおっしゃっていたようなんですけれども。

弘兼:あれ、そんなこと言っていました(笑)? 確かに素敵な妙齢の方が近所のコンビニにいましたね。そう考えると無人店舗化が進むのは残念です(笑)。最近はカスハラの問題とかもあるし、コンビニで働きたい人が減っているとなると、仕方ないんでしょうけど。寂しいですね。

取材・編集:伊藤綾

弘兼憲史(ひろかね・けんし)
1947年山口県生まれ。漫画家。早稲田大学法学部卒業後、松下電器産業勤務を経て74年漫画家としてデビュー。以来、漫画界の第一線で活躍し、『人間交差点』で小学館漫画賞、『課長 島耕作』で講談社漫画賞、『黄昏流星群』で文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、日本漫画家協会賞大賞を受賞し、2007年紫綬褒章を受章。漫画以外にも多くの著書を手がける。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
消費経済アナリスト、流通アナリスト、コンビニジャーナリスト。1967年静岡県浜松市生まれ。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務などの活動の傍ら、全国で講演活動を行っている(依頼はやらまいかマーケティングまで)。フジテレビ「FNN Live News α」レギュラーコメンテーター、TOKYO FM「馬渕・渡辺の#ビジトピ」パーソナリティ。近著『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(フォレスト出版)。

デイリー新潮編集部

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