52kg級の阿部詩が「私の人生そのもの」と挙げた意外すぎる曲は…代表3選手の意気込み【五輪柔道女子】
金メダルを目指してはいるが…
柔道以外に英会話やヨガにも熱心。昨年のグランドスラム東京大会に出場し、コマツに鍛錬に来ていたフランス人選手(48kg級のブランディーヌ・ポン選手)と一緒に風呂に入って、「どうして日本の選手は柔道しかしないの?」と訊かれたという。ポン選手は歯科医師を目指しているそうだ。
「日本の私たちは勝つことだけみたいな感じですが、フランス人の彼女は柔道がすべてではなく、人生の一つとして考えていて、何か余裕がある感じ」と羨ましそう。
「彼女と話していて、柔道を始めた頃、技が決まったりして楽しかったことや、一つ一つレベルアップして喜んでいたことを思い出した。今、肩の怪我などがあったけどできることを見つけてやっています」
21年の東京五輪では代表だったが、2回戦で伏兵のポーランド選手に敗れ、その選手が上位進出できず、敗者復活戦もなかった。金メダル候補とまではいかなかったが、大活躍に沸く日本の女子代表の中、一人、喜びに浸ることができなかった。登録していた男女混合団体戦では、銀メダルを受けたが出場はなかった。
「金メダルを目指してはいますけど、絶対に取りますとかそんな感じとは少し違うかな」
柔道以外からも様々なことを吸収、分析し、最終的には柔道にも生かす術を知るベテランは、3年間抱いてきた「もやもや感」をパリで吹き飛ばさんとしている。
角田夏実(48kg級)
31歳にして初めて五輪切符をつかんだ角田夏実は、「世界が恐れるアナコンダ」である。かつては阿部詩と同じ52kg級で、阿部に勝つこともあったものの、「彼女がいる限り五輪は難しい」と東京五輪後に階級を下げた。31歳という年齢で階級を上げるならともかく、下げることは相当厳しい。今も「減量との戦い」だという。
「ふつうは試合の1か月くらい前から体重を量っていきますが、今回は早いうちから体重計に乗るようにして、毎日、意識しています」
角田と言えば「アナコンダ」の異名を持つ寝技だ。最近の日本の女子柔道の目覚ましい活躍は、寝技の飛躍的な向上によるところが大きい。東京五輪でも、濱田尚里(78kg級)の重量級とは思えない寝技に舌を巻いた。また新井千鶴(70kg級)は、締め技で相手を失神させている。そして、阿部詩(52kg級)は決勝でフランスの強豪アマンディーヌ・ブシャールに抑え込みで一本勝ちした。
五輪の舞台に加わる角田は千葉県八千代市出身。東京学芸大学在学中にはブラジル柔術も取りいれて、関節技などを磨いてきた。
「柔術をするのではなく、あくまで柔道のためでした」
巴投げから、最後は、相手の肘関節を攻める得意の腕ひしぎ十字固めで相手に「参った」をさせる。それも、最近は決めるまでが早くなっている。
[3/4ページ]