52kg級の阿部詩が「私の人生そのもの」と挙げた意外すぎる曲は…代表3選手の意気込み【五輪柔道女子】

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 柔道女子の日本代表は6月26日、味の素ナショナルトレーニングセンター(東京都北区)での強化合宿を報道陣に公開した。その際に行われた会見から、各代表の意気込みを紹介する。【ジャーナリスト/粟野仁雄】

阿部詩(女子52kg級)

 その若さで水前寺清子とは。練習後の会見で好きな曲を訊かれた阿部詩は、チータ(水前寺清子の愛称)の「三六五歩のマーチ」を挙げた。ちなみに、この曲が大ヒットしたのはメキシコ五輪があった1968年。兵庫県神戸市出身の阿部の両親(浩二さん、愛さん)は生まれていない。

「高校の時、テレビのコマーシャルなんかで見たのかなあ。私の人生そのものと思いました。『3歩進んで2歩下がる』なんて、自分にピッタリなんですよ」と、屈託ない笑顔を見せた。

 兄の一二三(男子66kg級代表)とともに兄妹連覇を狙う阿部は、「普通の女の子になりたい」とも語った。これも古い。1970年代に人気を博した3人組のアイドルグループ、キャンディーズが引退した時の有名なセリフだ。

「柔道一筋、その道だけを歩んできた阿部詩から、ガラッと印象を変えた私になりたいなって。違う阿部詩を追い求めるのも面白いんじゃないかなと。人として勉強して視野を広げたり、幅を広げたりしたい」

 発言で「阿部詩」と自分の名を多く出すことも特徴だが、チャーミングな女性という事実も意識している印象をいい意味で受ける。

角田夏実の柔道は「不気味だった」

 だからと言って柔道に抜かりはない。練習で見せた打ち込みや投げ捨てのフォームの美しさは、真の天才でなければ真似はできない。かつて、夙川学院高校(神戸市・現須磨学園夙川高校)時代の練習中に当時の松本純一郎監督が「兄貴(一二三)より妹の方がずっと天才です」と断言していたのを思い出す。それから7年ほどが経った。

「クロアチアの試合では、素敵な自然の中でのんびりしてすごくよかった。東京五輪の前はそんなこと考えたこともない。私もちょっと大人になったのかなあ」とほほ笑んだ。そして、いつも神戸から試合に駆け付けてくれる父・浩二さんについて、「Instagramやってなんて言ってないのに。あんまり目立たないでほしい」とちょっぴり苦言も。

 ライバルだった角田夏実(48kg級)について問われると、「不気味やった」と答えた後、慌てて言い直した。「人間が、じゃなくて柔道がですよ」。「なにか蛇のように捕まってしまう。こっちの技が通じなかった。ベテランになって減量も厳しいのにすごい。尊敬します」と、自分の存在で階級を変えた31歳の先輩を評した。

「だいぶ順調。技術面、心、体の3つ、そろってきている」と、調子は良さそう。この日の乱取りも相手の倍動く印象で、付け入る隙を与えない。練習開始時、女子日本代表の増地克之監督が「代表はあまり無理しないように」と言っていたが、休憩時間以外は全く休まない。

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