「“みどりの窓口”を閉鎖したんだから、代わりに券売機を操作しろ!」 鉄道職員を悩ます「カスハラ被害」の深刻すぎる実態

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窓口を長時間にわたって占拠する

 A氏は、JR東日本がみどりの窓口を廃止してきたことは、経営判断の誤りであると指摘する。乗客に不便な思いをさせるだけでなく、現場の職員まで疲弊させてしまうからだ。せめて、「えきねっと」などのアプリや指定席券売機が使いやすければ問題はなかったというが、「駅員でも使いにくいし、わかりにくい」レベルであるといい、利用者に申し訳ないとの思いを抱くこともあるという。

 しかしながら、みどりの窓口で長時間居座ったり、駅員に対して苦情を言い続けたりする行為は感心しない。「鉄道ファンは鉄道に詳しいのですから、私たちの業務が円滑に進むよう、事前に経路などを調べてきてもらえると嬉しい。駅員の苦労もわかっていると思うので、協力いただけるとありがたいのですが……」とA氏は話す。

「窓口で粘って“これはどう?”“あれは?”など列車名を無駄に入力させて、結局、切符を買わずに帰っていく鉄道ファンもいます。いわゆる繁忙期や混雑時間帯には、できれば来ないでほしいですね。あと、最近増えているのは、駅に置いてある時刻表を盗む人。詳細は言えませんが、こういう窃盗犯が増えているので、時刻表を常時置いていない駅も増えているんです」

補充券の発券は割に合わない

 また、“最長片道切符”のように、ルートが極めて複雑な切符はすぐには窓口で発券できず、受け取りに数日かかることもある。長すぎるルートは、マルスで発券する切符では対応できないため、駅員が紙に手書きする補充券という切符が作成される。補充券は鉄道ファンや切符コレクターの間で人気が高いのだが、「通常の切符の発券よりも時間がかかるので、コストに合わない」とA氏。

「最長片道切符が補充券になるのは当然ですし、こういった切符を求める鉄道ファンは窓口が混まない時間を選んで来てくださるので、私たちも気合いを入れて作りますよ。ただ、指定席券売機でも作ることができる530円の指定券や、1000円にも満たない短距離の乗車券の作成を求めるのは勘弁してほしいですね。地方の小さい駅で、慣れていない駅員が無理やり補充券を作らされていると聞くと、気の毒ですよ」

 間もなく、鉄道ファンの間で人気の高い、普通列車が乗り放題になる「青春18きっぷ」のシーズンが到来する。実は、駅員が戦々恐々とするのが、青春18きっぷの利用者なのだそうだ。地方の1か所しかないみどりの窓口を占拠し、地元の利用者に迷惑をかける鉄道ファンが各地に出没するという。駅員も、鉄道ファンも、そして地元の利用者も気持ちよく鉄道を利用できるように心がけたいものだ。

ライター・宮原多可志

デイリー新潮編集部

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