パリ五輪の開会式で歌う「アヤ・ナカムラ」とは何者か 出演めぐりフランスで賛否両論

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郊外文化の申し子

 私の周囲では、小学生の女の子でも「アヤ・ナカムラは聴く!でもなに言ってるかはわからない」と、やはり人気があるのかと思いきや、50~60代の男性はそもそも名前すら聞いたことが無いという返事だったり、30代男性でも「名前は知っているし、どこかでかかっていることはあるけど、僕が聴くジャンルではないから歌は全然知らない」などの反応でした。若い世代では知名度はあるものの、年齢層が上がるほどあまり認知されていないようでした。

 50代の女性からは「知っているけれど、歌詞の内容も、歌い方、声も、あまりフランスを代表する歌手とは思えない。(人種差別という声もあるけれど)肌の色が白かったとしても批判されると思う」という意見も……。

 アヤ・ナカムラさんの曲はアフロポップなどと呼ばれる、アフリカの伝統音楽と現代のポップを融合した音楽で、本人はメディアで「アーバンポップス」とも述べています。

 彼女が育ったサン=ドニは、パリの北に位置し、パリ・オリンピックの競技場でもあり、サッカーやラグビーフランス代表のホームスタジアムでもあるスタッド・ド・フランスなどがあるエリアです。アフリカ系移民がとても多く、若者たちが新しい文化を生み出す場所としても認知されています。

 一方、フランスの伝統的な芸術やマナーを重んじる人達からは、このような郊外文化が与える影響はフランスにとってよくないと考える人もいます。

本人はどこ吹く風?

 五輪をめぐる議論のさなか、6月23日にパリのヴァンドーム広場で行われた「Vogue World 2024」という大掛かりなファッションイベントのオープニングに現れたアヤ・ナカムラさんは、ジャンポール・ゴルチエのドレスを身にまとい楽曲「FLY」を披露しました。

 これについてSNSでは「アヤ・ナカムラはゴージャス、綺麗!」というコメントも見受けられるものの「…でも歌声はひどい」、「これでエディット・ピアフを歌えるの?」、「ヤギみたいなひどい声」と、散々な言われようなのです。

 もっとも本人はかなりポジティブで、「歌詞は全てスマホで書いているし、テーマとかも決めないので、めちゃくちゃだとか、何を言ってるかわからないと言われることもある。でも私のように話す人もいるし、歌詞を理解できる人たちもいるのにね」と語ったり、メディアでも「私の曲はかなりイケてるから」「私の名前は美しいし」など、自己肯定感の高さを伺わせる発言が目立ちます。

 SNSの反応も「自分の守り方はわかっているつもり。自分のことを理解できない人がいるのは当たり前だと思っている」と持論を展開しています。また五輪をめぐる議論に対しても「(私の曲を)好きか嫌いかは、彼らの問題」、「色々という人達がいて、私が国家の議論の中心になっているけど、彼ら(批判する人達)に返せる言葉なんて何もない」とXに一度だけ投稿しています。

 SNSで拡散されて一気に売れることもあれば、過剰な批判でつぶれてしまうこともある今の時代に、彼女は自分なりの姿勢と距離をしっかり持っているように見えます。

 オリンピック開会式のパフォーマンスでもどんな評価を受けるか定かではありませんが、どのような評価に対してもブレないアヤ・ナカムラさんの今後の活躍がますます楽しみです。

ヴェイサードゆうこ
翻訳家・ジャーナリスト。青山学院大学国際政治経済学部卒。ITベンチャーから転身し、女性向けweb媒体のライター、飲食専門誌の編集記者として執筆。2016年よりフランスに移住し、現在はYouTubeで現地情報を発信中(http://bit.ly/2uQlngQ)。

デイリー新潮編集部

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