いま最も警戒すべきはAI…犯罪の主役はなぜ「ヤクザ」から「半グレ」に交代したのか

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「匿名・流動型犯罪グループ」(トクリュウ)が日本全国で同時多発的に増えた背景には、インターネットや携帯電話の普及がある。この影響で、かつて熟練の暴力団員など「犯罪のプロ」たちが手を染めていた新種の犯罪は、半グレに代表される若年層グループがその中心となっていく――『特殊詐欺と連続強盗 変異する組織と手口』(文春新書)は、さまざまな形で変異してきた犯罪とアウトローたちの歴史をわかりやすく解説している。

 共同作業で同書を著した「実話ナックルズ」元編集長の久田将義氏と、ジャーナリストの金賢氏は長年にわたって特殊詐欺や経済事件を取材し続けてきた。同書刊行を機に寄稿してもらった第1回記事では「犯罪のプロから、トクリュウ誕生の経緯」を詳述してもらった。第2回では情報技術(IT)の進化がもたらした実情と、今後注意すべき犯罪についてレポートする。(全2回の第2回)

犯罪はウイルス

 警察庁は3月7日、架空の投資話を持ちかける「SNS型投資詐欺」と、相手に恋愛感情などを抱かせ金銭をだまし取る「ロマンス詐欺」の2023年の被害額が計約455億2000万円となり、特殊詐欺の被害額(暫定値で約441億円)を上回ったと発表した。

 SNS型投資詐欺は、SNS上の偽の投資広告をクリックさせたり、ダイレクトメッセージを送ったりして被害者と接触し、暗号資産(仮想通貨)などへの投資を持ちかけて金銭を詐取する。ロマンス詐欺は外国人や海外在住の日本人を騙り、マッチングアプリなどで被害者に接触。恋愛感情を抱くように仕向けたうえ、やはり投資名目で資金をだまし取る手法が多いという。

 これらの詐欺手法が増加した背景、つまり被害者に共通している事情は、まず間違いなく「将来への不安」だ。

 堅実に資産を築いてきた人であっても、歴史的な円安に直面してみれば、「果たして自分の資産価値は守られるのか。運用してもっと増やすべきではないのか」と焦燥感に駆られても仕方がない。また、独り身の寂しさや心配から、婚活サイトなどに登録し、出会いを求める人たちもいる。

 そうした心理につけこみ、詐欺師たちは大金を巻き上げるのだ。

 さらに言えば、主として高齢者をねらった特殊詐欺への警戒が強まったことも、このような「変異」を促したのかもしれない。

 犯罪は、ウイルスのようなものだ。新型コロナウイルスはワクチンをすり抜けるように、アルファ株、デルタ株、オミクロン株と変異を重ねた。犯罪もこれと似ていて、環境の変化に順応しながら、変異を重ねている。

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