犯罪のプロはルフィを「マヌケ」とあざ笑うが…日々進化を遂げる「トクリュウ」の恐るべき実態

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トクリュウの持つ特性

 だからと言って、特殊詐欺や強盗を働く「匿名・流動型犯罪グループ」――いわゆる「トクリュウ」のすべてが愚かで、経験値が浅いと考えるのは間違いだ。彼らは刑務所など行くまでもなく、彼らなりのやり方で学んでいる。

 特殊詐欺の原型とも言える「オレオレ詐欺」が爆発的に増えたのは、警察のヤミ金融駆逐が佳境を迎えていた2000年代前半のことだった。もはやヤミ金融では食えないと悟った若者たちが、電話での取り立て中に「オレオレ」と話したところ、相手の高齢者が自分の孫と勘違いして振り込んだことから、この手法が生まれたのだ。

 興味深いのは、互いに組織的なつながりのないヤミ金融グループが、日本各地で同時多発的に、オレオレ詐欺へと移行していったこと。しかし、その理由は単純だ。ニュースで知った手法を、見よう見真似で試したのである。

 注目すべきは、それを可能にした環境だろう。インターネットも携帯電話もない時代だったら、そんなことが起こり得ただろうか。ニュースは新聞かテレビでしか見られず、その情報を仲間と共有するために紙コピーやビデオテープを持ち歩かねばならないとしたら、犯罪手法の見よう見真似も簡単ではなかっただろう。

 しかし2000年代前半に活動していた若き犯罪者たちは、ネットやケータイを当たり前に使いこなし、ごく自然と犯罪に取り入れていたわけだ。

 そして現在の情報環境は、当時と比べてもはるかに使いであるものとなった。スマホさえあれば、犯罪の失敗例も成功例も、いくらでも検索することができる。日々、多様な詐欺手法を開発し、警察の追跡をかわしつづけるトクリュウの若者たちは、こうした情報環境の中で自ら進化することのできる、新たなタイプの「犯罪のプロ」たちなのである。

第2回では、情報技術(IT)の進化が特殊詐欺に与えた影響や、これから最も警戒すべき犯罪についてレポート

(取材・文/久田将義・金賢)

デイリー新潮編集部

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