「ウルトラマン」TVシリーズ最新作が世界でも同時期放送・配信へ それでも舞台は日本である納得の理由

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監督・主演も世界を意識

「全世界共通の作品だね、ということを表現として意識するようには、確かになっています」

「アーク」のメイン監督を務める辻本貴則監督(※「辻」は一点しんにょう)は、世界への配信に向けてこう説明する。

「アーク」の舞台は日本の「星元市」と設定されているが、「日本で起きた話ではあるけれど、言ってみればそれは自分の隣町で起きた話。皆さんの国でも脅威はあるし、いずれ地球全体がピンチに陥って、皆さんの危機なんですよ、という話の展開にした。自分の街でもし起きたら、と想像させる感じにはしているつもり。例えば家族や近しい人に怪獣災害でその身に災難が降りかかる悲しみは世界に通じるでしょうし」。

 とはいえ、「円谷プロからいかにも日本的な表現はやめてくれというオーダーがあったわけでもないし、そもそもウルトラマンが日本発のヒーローだと、世界のファンも分かった上で見てくれていると僕は思っている。ウルトラマンの全体のテーマが今、世界で受け入れられているとすれば、そこがぶれなければいい」と明言し、世界をいびつな形で意識しすぎた作品になっていないことも明らかだ。

 主役でウルトラマンアークに変身する飛世ユウマを演じる戸塚有輝(24)は主演情報が解禁になった後、「SNSのフォロワーが一気に増え、いろんな言語の人からコメントが来た。世界での人気を実感した」と明かす。

「ブレーザー」劇場版での海外舞台挨拶の盛況ぶりを耳にし、自身でもそうした状況を期待しつつも「自分がどう受け入れられるのか、想像もできないけれど、ともあれ、作品を楽しんでもらいたいし、ぜひ世界中に(舞台挨拶で)行ってみたい。アークとともに走り抜けていくつもりです」と腕を撫す。

ウルトラマンとの絆

 辻本監督は幼少のみぎりからのウルトラマンファン。元歯科技工士という異色の経歴を持ちつつ、自主制作による映像作品を手掛けて数々の賞を受賞。2015年の「ウルトラマンX」でシリーズ初参加し、以後、8作目にして初のメイン監督となった。

「これまでのシリーズ作品は、いわゆる単発での監督回なので自分なりに面白く楽しくやってきた。各話監督ゆえに、シリーズのカラーから少し逸脱してもいいよね、というエゴを出してきた」と述懐するが、「主人公を描いていくことこそがメイン監督の務めであり、今回はそこに徹した。私の担当回では余計なノイズは要らないので遊び心を封印し、どっしりとやってきた」と話す。

 その中で、主人公とウルトラマンの絆に注目。幼少の頃に再放送で何度も見てきた、いわゆる“昭和ウルトラマン”では「変身する人とウルトラマンが対話するのはとてもスペシャルなことだった」のが実情だ。

 とはいえ、「ウルトラマンが何を考えているかを知りたい欲求が僕にはあり、その欲求を満たせないのは、僕がメイン監督をやるのにもったいない。ならば、ウルトラマンと主人公がきちんと対話して、互いに分かり合うことで絆を深めよう」という思いを軸に、ストーリーの本筋を、シリーズ構成・メイン脚本の継田淳氏とともに組み立てた。

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