「富士山」オーバーツーリズム問題で思い出す…「一度も登らないバカ、二度登るバカ」格言に込められた深い意味

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結局、富士山は…

 ・とにかく混んでいる。通常の登山における「登山家同士、何らかの連帯感を持つ」感覚がない。通常の山であればすれ違う際に挨拶をするが、高尾山同様、人が多過ぎるため、そんなことをしている余裕がない。人が多過ぎるのだ。渋谷の雑踏か!
 ・混んでいるため、遅い登山者に合わせざるを得ない。単に「動きがある行列に並んでいる」感覚になる。しかも、大渋滞で止まることがある
 ・道が単調なため、登山としての醍醐味はない
 ・人を見に来たのか自然を見に来たのかがよく分からなくなる
 ・物価が高い
 ・行き帰りの公共交通機関が混み過ぎている
 ・山小屋のレビューを色々見てください

 こうしたことから、否定派の富士登山経験者からすると「富士山は遠くから眺めるに限る」となるのである。これは一度行ったからこそ分かる真理であり、「富士山に一度も登らないバカ」の格言は「一度も登らないでDisるのもどうかと思うよ。Disるんだったら一度経験してみては?」というものだろう。

「二度登るバカ」については「一回目でお前は散々懲りただろうに、また行くのかwwwwww」というものである。

 私自身は元々「行列」「渋滞」「割高」「ミーハー」「権威」といった言葉が嫌いなため、北アルプスの縦走を経て富士山に登ることはなかったし、一生ないだろう。実際、登山を東京都民が楽しむのであれば、JR中央線・相模湖駅が最寄りの陣馬山がいいとさえ思うほどである。

 というわけで、今年の夏、富士登山へ行く方は「富士山に一度も登らないバカ、二度登るバカ」の言葉を知ったうえで、ぜひ、富士山を楽しんでください。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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