岡田阪神「夏場以降に猛チャージ」の一方で、水面下で進む来季へ向けたチーム戦略の中身

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6月は負け越し

 阪神・岡田彰布監督(66)が7月3日の広島戦で勝利し、藤本定義監督に並ぶ阪神監督514勝をマークした。さらに、「監督通算700勝」のメモリアルを迎えたのは、6月27日の中日戦だった。しかし、雨天中止を挟んで行われた翌々日のヤクルト戦では、守備での凡ミスがそのまま失点につながってしまった。打線も相変わらず。好機で「あと一本」が出ないありさまで、この29日の敗戦で月末を待たずに「6月の月間成績負け越し」が決まった。30日の日曜日も惜敗だった。

「月間成績では、2カ月連続の負け越しです。7月4日時点でのチーム失策数49は、12球団ワースト。首位広島とのゲーム差は2ですが、決してチーム状態は良くありません」(在阪メディア関係者)

 700勝を達成した際、岡田監督は、

「(記録は)全然、忘れてましたけどね。長いこと(監督を)やっていたら…」

 と、淡々と応じていた。担当記者たちは「照れ隠しではないか」と思ったというが、上昇気運を掴めないチーム状況でそれどころではなかったのかもしれない。

 700勝を達成する前日、球団事務所内でスカウト会議が開かれた。今年のドラフト会議へ向けて、約100人の選手がリストアップされたという。この時期、指名候補選手が100人前後になるのは、どの球団も同じだ。ここから10月24日のドラフト会議に向けて、絞り込んで行くことになる。

 だが、6月25日、他球団スタッフが驚くような行動を、阪神スカウト陣が見せていた。

「兵庫県の三木山総合運動公園で、地元の神戸弘陵高校と徳島県の生光学園高校が練習試合をしました。両校に好投手がいるため、10球団のスカウトが集まったんですが、練習試合なのに、阪神は統括スカウト以下、5人で視察に来ていました。ずいぶん気合が入っているなと、話題になっていました」(ライバル球団スタッフ)

 機材を持ち込んでのビデオ撮影や球速チェックを行ったほか、その場でストライクゾーンを9分割したチャート表の書き込みもしていたという。今季先発を務めている才木浩人(25)の活躍を見れば分かる通り、ここ数年、阪神は高校生投手の育成がうまくいっている。その“原石”の見極めに力が入っているのだろう。

今年のドラフト戦略は「即戦力のスラッガー」?

 今ドラフトで、複数の球団から1位指名されるのではと注目されているのが、侍ジャパンにも選出された宗山塁内野手(右投左打/明大)である。他の大学生では、

「関大・金丸夢斗(投)、愛知工大・中村優斗(投)、青学大・西川史礁(外)、同・佐々木泰(内)、大商大・渡部聖弥(外)なども高評価を得ています。高校生では報徳学園・今朝丸裕喜(投)や豊川のモイセエフ・ニキータ(外)らもいます。ただ阪神は、大山悠輔(29)、佐藤輝明(25)の調子が上がらず、外国人野手もスタメン落ち。近本(光司・29)も打撃不振に陥っており、即戦力のスラッガーを指名してくると思われます」(在京球団スカウト)

 宗山は2月に右肩甲骨を骨折し、4月上旬には実戦復帰しているが、7月12日から始まる「プラハ&ハーレムベースボールウィーク」に出場する大学日本選抜を辞退している。骨折もあって大事を取ったようだが、金丸も腰の不調で辞退している。対照的に評価を上げてきたのが青学大の西川だ。外野手だが、元々は内野を守っていた。阪神スカウトは「(今も内野が)守れますよね?」と各方面に確認しているという。

「こうした動きから、打線の中軸を任せられる内野手の指名が、現時点での第一希望ではないかと見ているんです」(同)

 一方、岡田監督とフロントも、来季を見据えた動きを見せている。

 話はセパ交流戦の5月31日まで遡る。交流戦開幕カードの千葉ロッテ戦だった。延長10回に押し出し四球によるサヨナラ負け、ZOZOマリン球場の取材スペースに集まった記者団に対し、阪神の球団スタッフは右手を左右に小さく振った。岡田監督の囲みインタビューはナシになったというジェスチャーである。

「もうええわ」

 岡田監督の姿は見えなかったが、チームバスへと向かう通路から嘆き声が聞こえた。この日は、牽制アウトで好機を潰し、ダブルストッパーの一人であるゲラを投入して同点に追いつかれるなど、後味の悪さも残った。取材拒否を決めた気持ちも分かるが、実は、球場内では杉山健博オーナーの姿が目撃されていた。

「オーナーも多忙な人ですからね。チームを激励するだけが目的だったら、甲子園球場で試合のある他の日でも良かったはず。岡田監督とじっくり話をするつもりで大阪から駆けつけたのでしょうが、なんでこの時期にと、関係者はざわつきました」(前出・在阪メディア関係者)

 オーナーと監督は宿舎ホテルで会談したという。株主総会前だったので、チーム状況など、確認しておきたいこともあったのだろう。また、阪神は前節の日本ハム3連戦で主催試合の観客動員数100万人超えを果たしている。主催24試合目での100万人超えは12球団最速である。昨季ほどの勢いはないとはいえ、チームは今も首位戦線に踏み止まっている。

「でも、その12球団最速の100万人超えが問題なんです。営業的にはニンマリでも、ファンは昨季の優勝・日本一で、“タイガースを見る眼”が肥えています。勝率5割ラインで踏み止まったままでペナントレースが終わるなど、絶対に納得しません。昨年よりも好成績で優勝することが最優先なのです」(前出・同)

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