味の素は明治時代になぜ生まれたのか グルタミン酸ナトリウムを開発した日本人学者がドイツで見た光景
「味の素」を知らない世代
“おいしさに妥協しない減塩生活”を実践してもらうため、味の素はインターネットで「LOW SALT CLUB」や「スマ塩」といった専門サイトを開設している。
サイトでは減塩の意義などが解説され、減塩レシピが紹介されている。例えば塩分量0・8グラムの「えびとブロッコリーの和風炒め」や「たっぷり野菜のコンソメスープ<塩分控えめ>」、塩分量1・0グラムの「定番肉じゃが」──という具合だ。
レシピは「味の素」や「お塩控えめの・ほんだし」、「味の素KKコンソメ」<塩分ひかえめ>などの調味料を活用し、塩分量を減らしている。
鉄は熱いうちに打て、という。味の素は子供たちに伝統的な和食の味を伝える取り組みも行っている。例えば小学校5年生を対象にした出前授業を行っており、「うま味・栄養のひみつ」と「ものづくり『ほんだし』のひみつ」の2つが用意されている。
さらに興味深いのがZ世代だ。野村総合研究所によると、Z世代の定義は《1990年代半ばから2010年代序盤に生まれた世代で、2023年現在12歳~28歳前後の年齢層》だという。
そして彼らは「味の素」と耳にしても、粉末が詰められた瓶を思い浮かべるわけではない。連想するのは、例えば冷凍餃子だ。東京オリンピックの選手村で提供され、世界中の選手が「世界一おいしい」と絶賛したことは記憶に新しい。
味の世界でも官民一体
「社名としての味の素ではなく、うま味調味料としての『味の素』を知らない世代が出てきているというのは、私たちも認識しています。幸いなことに『「味の素」は有害で危険な物質だ』と身構えるような人が少ないんですね。調味料として使えば、とても便利で簡単においしくなる。減塩に活用することもできる。そうした有用性を発信していくことで、うま味調味料『味の素』に関する理解を深めてもらうことを期待しています」(平林さん)
官民連携と聞けば、産業振興を思い浮かべる方が多いだろう。だが、最近は「健康と食」という分野でも始まっている。
厚生労働省は2022年3月、産学官連携の「健康的で持続可能な食環境戦略イニシアチブ」を立ち上げた。大きな特徴の一つに民間企業の参加が挙げられ、明治、キッコーマン、日清食品などに加え、味の素が参加している。
「国が健康的な社会を目指そうという際、我々民間企業含め、マルチステークホルダーが一緒に取り組むことが必要だと考えています。やはり日本人は、食を大切にする気持ちを持っているのではないでしょうか。とはいえ、皆さんお忙しいですから、毎食栄養のバランスを考えて食事を摂るのは大変です。そこで最近、『ツジツマシアワセ』という取り組みをスタートさせました」(吉田さん)
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