世界各国で使用禁止? SNS上で未だ流布する「味の素」悪玉論…味の素株式会社に見解を聞いた

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「味の素」の原料は蛇という“デマ”

 こうした取り組みは日本だけに留まらない。アメリカの有名経済紙・ウォール・ストリート・ジャーナルは2019年4月、「味の素が挑むイメージ修復作戦、米で投じる11億円
グルタミン酸ナトリウムへの反発は外国人に対する嫌悪によるものとの指摘も」の記事を配信した(註2)。

 味の素が「正しいデータを発信することによる手応え」を実感する機会も増えてきたという。

「SNSなどネット上で、MSGに関する正しい知識を持ち、その上で意見を投稿しておられる方が非常に増えたな、という認識を持っています。例えばネット記事のコメント欄で、MSGに対するネガティブな意見や、場合によっては弊社に対する誹謗中傷のような内容の書き込みが行われても、すぐに科学的に正確な見地から正しく反論してくださる方もいらっしゃる。そういった現象を目にすることが増えてきたことは、とても嬉しく思っています」(平林さん)

 歴史小説の名手として知られる子母沢寛が東京日日新聞社の記者だった時代、各界の著名人に食にまつわるエピソードを取材し、紙面で連載。好評を博したため、1927年に『味覚極楽』の書名で上梓した。

現在でも中央公論社から文庫や電子書籍が出版されているが、その中に「味の素」に関して次のような記述がある。

《「味の素」が、まだあれはまむしを粉にして入れてある、その証拠には川崎か何んかの駅へ行くと味の素行きの蛇の入った箱が沢山積んであって、ある時それがこわれて、坑内が蛇だらけになったなどという話が、まことしやかに巷に伝えられていた》

 「味の素」を巡る“デマ”は、昭和初期の頃から流布していたということなのだろう。

プロも活用する“裏ワザ”

 現在の味の素は自社製品の活用方法を積極的にアピールしており、それは後編で取り上げる。ここでは「料理が大好きな人」に向けた“裏ワザ”をご紹介しよう。

「家庭でも応用できるプロのテクニックとして、料理の下処理と仕上げに使うという2点をお伝えしたいです。料理が好きな方ですと、例えば海老の下ごしらえをされることもあると思います。その際、軽く『味の素』を振りかけておくと、うま味が増しておいしくなります。特に、冷凍の海老は、解凍時にドリップと一緒に流れ出てしまううま味成分を『味の素』で補いおいしく解凍することができるのでお勧めです。また昆布やかつお節、煮干しなどで出汁を取られる際、天然ものはどうしても味にばらつきが生じます。味見をされて、ちょっと今日はうま味が弱いと思ったら、ほんの少し『味の素』を加えると、味に奥行きが生まれます。和食の専門店でも活用されている方法なので、ぜひ、試してみてください」(平林さん)

 第2回【味の素は明治時代になぜ生まれたのか グルタミン酸ナトリウムを開発した日本人学者がドイツで見た光景】では、「味の素」を上手に活用すると、何と体に害があるどころか、健康を増進する働きがあるというテーマを取り上げたい。

註1:世界5位の人口大国で直面する独特な輸入制限や準関税(パキスタン)(日本貿易振興機構:2019年3月15日)

註2:日本語版はダイヤモンドオンラインの有料記事で配信

デイリー新潮編集部

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