世界各国で使用禁止? SNS上で未だ流布する「味の素」悪玉論…味の素株式会社に見解を聞いた

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うま味成分は同じグルタミン酸

「フェニルケトン尿症という日本では難病に指定されている疾病があります。特定のアミノ酸を代謝できないので、患者の皆さんは代謝できないアミノ酸をできる限り少なくした食事を摂取しなければなりません。もしMSGの代謝障害によって深刻な健康被害が起こるのであれば、同じようにグルタミン酸を低減させた食事を摂るという医療的な措置が必要になると思います。グルタミン酸はうま味調味料を使用しない場合でも通常の食事に含まれているからです。しかし、これまで弊社ではそのようなケースがあったことを確認できておりません」(吉田さん)

 買い物の際に食品成分表をチェックすると、「昆布エキス」、「酵母エキス」、「たんぱく加水分解物」などと書かれている。それでも「うま味調味料は使われていない」と判断して購入している人はいないだろうか。

【1】MSGである「味の素」を入れたお湯、【2】「昆布エキス」や「酵母エキス」、「たんぱく加水分解物」などが含まれているお湯、【3】天然の昆布で取った出汁を温めたもの──この3種類の液体を科学的に成分分析すると、いずれもグルタミン酸が豊富に含まれている。どれもうま味成分は同じグルタミン酸なのだ。

サイエンスの重要性

「MSGに過剰反応し、健康に害が生じる人が実際にいると仮定しましょう。グルタミン酸は生物が自分たちの体の中で作りだしているアミノ酸です。ですから多くの食べ物にも含まれています。うま味調味料の使用を避けたとしても、様々な“天然素材”から摂取することで症状が出るはずなのです。例えば自宅で昆布を入れた湯豆腐を食べても、最高級昆布の出汁を使ったお椀を口にしても、含まれるグルタミン酸の量によっては健康被害が生じる可能性があります。」(吉田さん)

 外食産業の多くがMSGを上手に活用し、安全で、低価格で、おいしい料理を提供している。もしうま味調味料を原因とする健康被害が科学的に確認されたら大変なことになるだろう。個人と法人を問わず桁違いの数の原告が、味の素株式会社に訴訟を起こす事態に発展するはずだ。

 味の素はSNS上などで事実無根の投稿が行われているのを確認しており、科学的に正しいデータを発表することに注力しているという。

「率直に申し上げて、事実と異なることが掲載されていることがあります。しかし弊社はサイエンスを大切にしています。安全性や品質を最優先し自分たちで研究しています。さらに社外の先生の方々にも研究していただき、客観性が保証された安全性データを取る、データを論文などで対外的に公表する、新しい情報を共有し、サイエンスをベースにした正しい情報を発信していく、といった地道な活動を着実に取り組むことが重要と考えています」(吉田さん)

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