世界各国で使用禁止? SNS上で未だ流布する「味の素」悪玉論…味の素株式会社に見解を聞いた

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パキスタンの現状

 Xに「味の素 世界 禁止」と入力してみると、確かに《使用禁止が世界標準》といった投稿が表示される。特に「アメリカ 味の素 禁止」で検索すると、途端に表示数が増加することが分かる。《アメリカでは味の素が禁止されていると聞いた》といった事実無根の投稿が延々と続く。

 しかし実際には、「味の素」の主成分である「グルタミン酸ナトリウム(MSG)」はアメリカの行政法「連邦規則集」で一般的に安全と認められている物質と明記されており、アメリカでの使用は認められている。

 味の素がMSG禁止を把握している国はパキスタンだけだ。こちらは多分に宗教的、政治的な意図に根ざしており、パキスタン政府が「味の素」を狙い撃ちにした可能性も指摘されている。その経緯を日本貿易振興機構(JETRO)がレポートにまとめ、2019年3月に発表した(註1)。

 レポートなどによると、18年2月にパキスタンの最高裁判所が突然、MSGの輸入と国内販売の禁止を布告。日本だけでなくパキスタンの食品業界も「科学的根拠のない措置」として撤回を求めているそうだが、なかなか進展は見られないようだ。

MSGで味覚障害は起きない

 科学的根拠に乏しい投稿の2つ目は、健康被害を主張するパターンだ。《舌が馬鹿になる》、《味覚が壊れる》、《舌が痺れる》、《食べると具合が悪くなる》……といったSNS上の投稿が挙げられる。平林さんが言う。

「こうした投稿は科学的な見地から間違っていると考えられます。例えば味覚に関してですが、味は舌にある味蕾(みらい)の味細胞に味物質が反応することで感じます。味細胞は入れ替わりが非常に早く、10日程度で新しくなります。つまりMSG摂取で味覚異常が生じ、その状態がずっと続く、いわゆる“味覚が壊れる”ということは起きないはずです」

 私はうま味調味料を口にすると、本当に具合が悪くなる──こんな反論をする人もいるかもしれない。だが、その大半は「プラセボ効果」で説明できるようだ。

「プラセボ効果」とは、例えば医師や薬剤師から「これは睡眠薬です」とブドウ糖の錠剤を手渡されそれを飲むと、かなりの人が本当に眠くなってしまう……というような現象のことをいう。自己暗示と言ってもいいだろう。

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