NHK中継がある自民党の予算委員会は本当に酷かった…青山繁晴・参院議員がみた「派閥支配の実態」

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「冷遇して悪いね」

 青山氏は参議院議員の1期目、予算委員会に6年間所属していた。同期当選組で任期の6年間、ずっと予算委に所属していたのは青山氏だけだったという。

「加計学園の問題で安倍晋三総理が苦しんでいる時に『予算委で事実を発掘して質問してくれ』と頼まれました。そこで前愛媛県知事の加戸守行さんを参考人としてお呼びし、ぼくが質問する形で初の内部証言をお願いしたのです。NHKの中継がある日の予算委員会で、質問できたのは実に6年間でこの1回だけでした。中継のない日には数少ないですが質問機会がありました。しかしNHKの中継があると派閥が乗り出し、質問者を割り振ってしまいます。そのため当時、参議院自民党の幹事長だった世耕弘成さんに『これは、いくら何でもおかしい』と抗議したのです」

 世耕氏は派閥から推されて質問する、青山氏の同期議員の“持ち時間”の一部を削って、青山氏の質問時間を20分だけは捻出してくれたという。

「しかし、ぼくの直後に質問した別の同期議員は、たっぷり60分の質問です。2人の同期は共に派閥が推して質問の機会と時間をいずれも、もらっていました。前者の議員は、支持団体が組織の人員も政治的影響力も弱く、それでぼくに20分を渡すことになったのでしょう。統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の票もあって、それが派閥の長の都合で剥がされて、次の選挙に出られず引退となりました。国会質問は、議員の本分です。そこへこれほどまでに派閥が支配力を持ち、またそれは団体支援と結びついているのです。率直な世耕さんはぼくに『冷遇して悪いね』と仰いました。裏金事件でも議員が売ったパーティー券の収益を、いったん派閥が全て回収し、それを裏金の形で還流するというカラクリが最も問題です」

政党と派閥の違い

 青山氏は「そもそも閥という言葉を無批判に使っているのは、日本の国会議員として感覚が鈍すぎる」と指摘する。確かに軍閥、学閥、閨閥……と、閥のつく言葉は悪いことばかりだ。福沢諭吉にも「門閥制度は親の敵(かたき)でござる」という有名な言葉がある。

「人間は徒党を組むものです。そこで法律を整備し、徒党の目的を正当化して政党が生まれました。チャーチルは『民主主義は最悪の政治形態である。ただし、過去の他のすべての政治形態を除いて』との有名な言葉を残しましたが、民主主義や資本主義と同じように、政党政治にも欠点はありますが、代わりとなる政治システムはありません。一方の派閥は私的な集まりで、根本的には法律の縛りを受けていません。そんな団体が勝手に資金を集めて分配していいはずがないのです。国会の質問も主権者の付託を受けた神聖な行為です。それを派閥に所属しているかどうかで差別する。憲法で差別は禁止されているはずですが、自由民主党では完全無派閥の議員に対する差別は許されているわけです」

 第1回で紹介したが、青山氏は、3月に開かれた衆院政治倫理審査会での岸田文雄首相の発言、「政治は特別という特権意識があったならば是正し、改革を進めなければならない」を強く問題視している。

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