岸田首相の発言には椅子から転げ落ちるほど驚いた…青山繁晴・参院議員が語る「裏金」と「特権意識」の問題点

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世襲と利益誘導

 今回の裏金事件では、自民党の国会議員が派閥に所属すると、カネを根こそぎ派閥に吸い取られるという実態が明らかになった。

 それでもなお、特に衆議院の小選挙区制では、自民党の議員が派閥に所属するメリットは大きい。同じ派閥に所属する大物・有名議員が応援演説に駆け付けてくれるし、選挙資金のサポートもある。表にできない裏金さえ融通してくれることも明らかになった。

 派閥に所属する議員は、派閥に“上納金”を納めるため、さらには選挙で勝つためにも、選挙区への利益誘導が重要になる。自民党の国会議員に世襲が多いのも同じ理屈だ。世襲議員は最初から知名度があるため選挙に強い。自民党内で出世のスピードが速いため、地元への利益誘導が手厚くなる。

「再び岸田総理を引き合いに出さざるを得ませんが、息子さんを総理秘書官にしたということは、世襲を考えているということでしょう。総理で3代目の世襲ですから、実現すれば4代目です。これが門閥でなくて何でしょう。さらに2023年のG7サミットで日本が7年に1回の議長国になった時、岸田総理は『核の問題も話し合いたい』と広島での開催を決めました。当時、ぼくは岸田総理に電話で諫言を申していましたから、電話をかけて反対しました。核の問題なら長崎でやるべきだ、総理たるものが地元に利益誘導してはいけないと申し上げました。世界では『Hiroshima、Nagasaki』と言っているけれど、やはり長崎のほうが知名度は低いし、核の問題を考えるなら長崎に投下されたプルトニウム型のほうが現代的です。岸田総理が耳を傾けなかったのは、息子さんへの世襲を確実にするために地元を重視する意識もあったのではないでしょうか。小選挙区制で勝つには、世襲と選挙区への利益誘導が最も効率的なのです」

岸田首相だけには最善の結末

 選挙資金規正法の改正は、世襲と利益誘導に熱心な岸田首相が陣頭指揮を取ったようだ。読売新聞は6月1日の朝刊に「世論を意識 首相決断 規正法改正案合意 『丸のみ』自民内しこりも」の記事を掲載した。

《政治資金規正法改正を巡り、岸田首相(自民党総裁)は自民内に慎重論が強い公明党や日本維新の会の要望を受け入れ、今国会での改正実現になんとか道筋をつけた。世論の逆風の中で他党の主張を軽視すれば政権がもたないと判断したためだ》

 記事によると、5月30日の夕方、岸田首相は「自公連立の基盤を崩すわけにはいかないだろ」と述べ、政治資金パーティー券購入者の公開基準額を「5万円超」に引き下げるよう求めていた公明党の要求を《丸のみ》したという。

「法改正を巡る党内議論において、ぼくと同志議員らは裏金事件の本質を突くことを試みました。しかし『政治刷新本部』の本部長である岸田総理はそれを避け、自由民主党(註:青山氏は結党の精神に戻れと主張し、「自民党」とは言わない)が国会に出した規正法改正案は問題の表面を撫でているだけで、その表面すら改革しない。公明党や維新との修正協議も党利党略でした。それでも岸田総理にとっては最善の結果でしょう。衆議院を解散して公明党を困らせない代わりに、総辞職も会期延長もなし。次の総選挙で敗北して議席が減っても、公明との連立は国交大臣ポストを公明に贈り続ければ、維持される。維新に関西万博担当大臣を贈って自公維の連立とすることも模索しているようです」

 要するに岸田首相は“政治とカネ”の問題に終止符を打とうとして改正案をまとめたわけではない。次の自民党総裁選で「俺を総裁に再任しろ」というメッセージを送ることが目的だったのだ。

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