「車やゴルフの会員権はどうでもいいけど、会社は返してほしい…」 ダイソーを訴えた「大創出版」前社長が「会社乗っ取りトラブル」を告発
「“もっと厚くしろ”と言われたことも」
「博丈さんとの出会いは私が企画した辞典を売り込みに行ったのがきっかけです」
と前社長が語る。
「当時、私は教育図書という教科書出版会社の専務をしていました。商品をダイソーでテスト販売したところ、ものすごく売れた。そんな折、教育図書が代替わりすることになって退社。博丈さんの勧めもあり、『大創出版』を立ち上げることに決めたんです」
会社設立は2001年。大創産業が51%、前社長サイドが49%を出資し、代表取締役には博丈氏と前社長の両者が就任。大創産業の幹部や、前社長の子息も取締役に入った。
「毎月、経営会議をやり、もろもろの事業について話し合った。博丈さんからはいつも“お客さんが喜ぶいい本を作れ”と言われました。見本を持っていった時も“もっと厚くしろ”と言われたことがあります。ボリュームと内容を充実させることに貪欲な方でした。高島易断の小冊子やカレンダーなど、ダイソーで売る本の多くを作っていた。とにかく売れて注文が毎月100万冊もありました」
ダイソー相手の取引は、買い切りで返本がなく、取次会社も通さなくて済み、倉庫も必要ない。年商は10億円を超えた。
ところが18年、それが一変する。
「“利益相反行為で会社に損害を与えた”と激怒」
脳梗塞を患った矢野氏はこの年、大創産業の社長の座を靖二氏に譲っていた。
「10月のこと。はんこを持参するようにと言われて会社に行くと、2代目の社長と大創産業の社員が来たんです。対面して座ると、社長はいきなり“おたくは大変なことをしたな”と怒り始めました。声を荒らげ、周囲はおろおろしてばかりでした」
2代目は何を問題視していたのか。
実は大創出版は、出版物の企画・編集の実務を「創美出版」なる会社に下請けに出していたという。
「これは私が大創出版を作る少し前に作った出版社で、私が株を持ち、家族が取締役に入っています。そもそも大創出版は取締役以下数名の会社なので、ダイソーと取引をするに当たっては創美に業務を発注することとし、それを博丈さんにも伝えていた。しかし、2代目がダイソーの社長になり、大創出版の取引先を調べる中で、この会社が出てきた。“お前の会社じゃないか”“利益相反行為で会社に損害を与えた”と激怒したわけなのです」
次ページ:「“社長が怒ってるよ、速く速く”と言いながら勝手にはんこを」
[2/3ページ]