自民党埼玉県議団の控室に「監視カメラ」 不満分子の口封じ? 「あまりに子どもじみている」との声も

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見せしめの「除名処分」が県議たちのトラウマに!?

 自民党県議団では、実際に今年3月、冒頭で触れたお留守番禁止条例について当初から批判してきたベテラン県議が、自身の経費をめぐる事務的ミスを咎められ、見せしめの「除名処分」(自民党籍はそのまま)を受けている。そんなトラウマが県議たちを黙らせているのかもしれない。

 各会派が使っているスペースはすべてが県の行政財産であり、監視カメラの設置や配線などの工事については、事前に許可申請が必要だ。議会事務局によると、工事は5月24日に行われたが、県議団から県側に許可申請が行われたのは、当日になって工事業者が来てからだったという。結果的に許可は出されたが、申請書の目的欄には「セキュリティを確保するため」と書かれてあったという。

 こうした経緯について、当の埼玉県議会に複数の知人がいるという関西のある県議会議長経験者はこう疑問を投げかける。

「選挙で選ばれた、いわゆる選良である議員たちの部屋をビデオカメラが監視しているなんて、あまりにも子どもじみている。こんなことをやられて、県議たちが文句も言わないで従っているのは埼玉だけだろう。業者が工事に来てから申請書が出たようだが、議会事務局はなめられているのではないか」

性自認、お留守番禁止、男女共学化 県議団は何をめざしているのか?

 地方の県議会では同じ自民党系でも二会派に分かれていることが少なくないが、埼玉県議会は定数93(欠員1)のうち、自民党県議団だけで過半数を大きく上回る57の議席を占めている。このため、会派が議会に出した条例案はほぼすべて成立している。

 2022(令和4)年7月に、埼玉県議会は都道府県で初めての「性の多様性を尊重した社会づくり条例」、いわゆるLGBT条例を制定した。この条例には「何人も性的指向又は性自認を理由とする不当な差別的取扱いをしてはならない」とあり、自己の性についての(主観的な)認識を意味する「性自認」いう曖昧な基準への不安もあって、本会議の採決ではさすがに自民党県議団からも退場する県議が続出した。翌2023(令和5)年6月に成立した国のLGBT法でも、この「性自認」という表現は基準が曖昧だとして使われていない。

 同県では男女共同参画苦情処理委員が昨年8月、県教育委員会に男女別学制度を敷いている進学校に対し、共学化を勧告した。これを受けて共学化の是非をめぐって議論が巻き起こり、別学の高校のOBOGや在校生からの反対の声が強まっている。そうした中、自民党県議団の田村団長は今年2月の定例本会議で、共学化を求める立場から、県教育局が生徒や保護者にアンケートを実施したことについて、「問題の本質に触れず、自身の責任を放棄するかのごとく拡散している」などと教育長を責め立てた。

 こうした動きについて、共学化に疑問を感じるという元県議は、「共学化と男女平等論を結びつけるのは無理がある。自民県議団の幹部らがなぜ、ここまで共学化にこだわるのか不思議だ。まずは、当事者である生徒たちや卒業生の意見を聞くのは当然だ。“お留守番禁止条例”の時のように、かれらが民意と乖離することにならないか心配している」と漏らす。

宮田修一

デイリー新潮編集部

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