自民党埼玉県議団の控室に「監視カメラ」 不満分子の口封じ? 「あまりに子どもじみている」との声も
埼玉県議会の自民党県議団(田村琢実団長)が、子どもを自宅に置いて朝のゴミ出しをすることも「児童虐待」と見なされかねない「虐待禁止条例改正案」を提出したのは昨年秋。見かけた人に「通報義務」まで課すという内容に、子どもを持つお母さんたちが猛反発し、可決目前で撤回に追い込まれたのは記憶に新しい。そんな埼玉県議会の自民党県議団で、人権侵害とも思える不可解なことが起きている。控室に監視カメラが設置され、県議らの行動が、常時、モニタリングされているというのだ。【ジャーナリスト/宮田修一】
【写真】監視カメラが撮影した「県議団の控室」映像、実際の写真
設置の理由は「物がなくなってはいけないから」
監視カメラが設置されたのは5月下旬のこと。記者が入手したモニター画面には、控え室に県議の机がずらりと並んだ様子と、県議らしき人物の姿も映っている。モニターは県議団が雇用している女性事務員の机に置かれ、カメラの映像を一括あるいは分割画面でモニタリングできる。関係者によると、複数の監視カメラのうち1台は、特定の幹部の机とその周辺が見えるように設置されているという。
埼玉県議会では7月5日までの予定で定例例会が行われているが、一体、誰が何のために監視カメラを設置したのか。県議団のナンバー2である中屋敷慎一幹事長は、設置の目的について、「設置の理由はセキュリティ上の問題であって、何かがあったからというわけではない。以前から、そういう計画があって設置に到ったということ」とした上で、こうも付け加えた。
「長時間(控え室に)いる議員もいるので、そういう中で物がなくなったりということがあってはいけないねということで取り付けた。他の県議会で他人の机を引き出していたということを耳にしたことはあるが、それがために(監視カメラを取り付けた)ということではない。プライバシーの問題もあるので、もちろん団員からは事前に了解を取った」
「選挙で選ばれた我々が、なぜ監視される」のつぶやき
ところが、県議らに事前に了解を得るような丁寧な説明や文書配布などが行われた形跡はない。関係者によると、幹部の1人が県議たちを前に「他の県議会で盗難があったから」などと、ごく簡単に口頭で設置理由を説明したが、誰も疑義を唱えたり、質問をしたりしなかったため、そのまま短時間で終わったという。
県議の中には、こうした経緯について問われても口を閉ざす者が少なくない。ようやく匿名を条件に取材に応じた若手県議は「監視カメラを付けると聞いて、最初は冗談かと思った。不法侵入や盗難事件があったわけでもないのに、なぜ、監視されなければいけないのか理解できない。文書を引き出しから盗む者がいるとでも思っているのだろう。『一致団結して県民のために』と言いながら、私たち県議の仲間を信用していないということか」とつぶやいた。
一方、中堅の県議は声を潜めてこう話す。
「監視カメラを付けることで、大所帯の県議団内の不満分子を監視したり、牽制したりする効果を狙っているのは明らかだ。なぜ、文句を言わないのかって? 一部の役員が人事を握っているから、余計なことを言ったら次の選挙で公認をもらえなくなるかもしれないし、あら探しをされて除名になる可能性だってある。面従腹背ですよ」
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