「定年まで働きたい」新入社員はたったの2割…“会社を辞める若者”に大企業が頭を抱える本当の理由「転職サイトの口コミはダメージが大きい」

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こじれると強烈な“書き込み”が

 では、企業側は「辞めていく若者」をどう考えているのか。

「企業にとっては本当に大きな損失ですよ。というのも、企業は採用活動や若手の育成に巨額の費用を投じているので、入社から数年で辞められるとそれがムダになってしまう。また、特定の世代の社員が少ないと、部内のコミュニケーションにも支障が出る。50代の上司が20代の部下と話しているときに、どちらの事情も理解できる30代~40代の社員がクッションとして間に入るだけで会話が弾むことがありますよね。それがなくなると職場内の雰囲気にも影響が出ますし、何より、若手の退職が相次ぐ企業はイメージが悪い。そうした評判が広がれば、人材を募集しても若者が集まりません」

 その意味で企業が神経を尖らせているのが、「転職サイトの書き込み」だという。

「退職を希望する若手がいたとして、会社側が無理に引き留めることは難しい時代です。会社を辞めたいと考えている時点で、少なくともいまの勤務先に強い愛着はないと思います。その段階になったら、なるべく会社への恨みつらみを残さないように送り出すしかないかもしれません。他意のない引き止めのつもりがハラスメントと捉えられるなど関係がこじれたまま退職に至ると、転職サイトに強烈な口コミが書き込まれることも。転職を検討している人は、そうした書き込みも会社を知る上で重要な証言と考えるので企業の被るダメージも甚大です」

藤井俊(ふじい・さとし)
株式会社帝国データバンク情報統括部長。1965年生まれ。商社、通販会社での商品開発を経て1993年に帝国データバンク入社。高松支店・岡山支店の企業信用調査部門を経て、2013年に広島支店情報部長、2023年4月から現職。景気動向や企業取材の経験を踏まえたわかりやすい解説・講演に定評。

デイリー新潮編集部

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